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METライブビューイング「エレクトラ」 最高の名演に興奮

METライブビューイング「エレクトラ」をみた。凄まじいまでの名演。すべてが圧倒的。ずっと興奮しながら1時間50分を見続けた。

その中でもやはりエレクトラ役のニーナ・ステンメがとてつもない声の威力を聴かせる。単に声が大きくて強いだけではない。実に繊細にエレクトラの心を歌い上げる。まるでリートのような歌いまわしをするところもある。それがこれまでのエレクトラ歌いと違うところだ。だが、そうしたところも少しもだれずに緊迫感を盛り上げる。最後までまったく声の疲れを感じない。これまで彼女の演じるイゾルデやブリュンヒルデも素晴らしかったが、エレクトラもそれに劣らない。

 クリソテミスを歌うエイドリアン・ピエチョンカも、まさしくクリソテミスにふさわしい歌唱。清楚で美しく、しかも芯が強い。この人もしばしばリートのように繊細に歌うが、そうでありながら迫力満点。エレクトラとの掛け合いの迫力にはすさまじいものがあった。ステンメに一歩も引けを取らない。これほどまでにエレクトラに負けないだけの威力を聞かせてくれるクリソテミスも珍しい。私は彼女のアリアドネとゼンタを実演で聞いているが、それ以上の深い感銘を受けた。

クリュテムネストラと歌うのはヴァルトラウト・マイヤー。全盛期と比べれば確かに声の輝きは失われている(バイロイトの前から2列目の席で聴いた彼女の「愛の死」は私のもっとも幸せな音楽体験の一つだ!)が、その迫力と独特の色気は相変わらず圧倒的。あまりに若々しく魅力的なクリュテムネストラだと思った。

オレストのエリック・オーウェンズ、エギストのブルクハルト・ウルリヒはもちろん、召使たち一人一人に至るまでまったく非の打ち所がない。召使たち一人一人の声と演技にしっかりとした個性があり、ドラマに奥行きを作りだしている。

指揮はエサ=ペッカ・サロネン。このオペラはつい力で押しがちになるが、サロネンはしばしば繊細な部分を作る。むしろ抑制気味。しかし、それが一本調子にならずにドラマ性をいっそう強めている。鋭利で繊細でドラマティック。

演出は故パトリス・シェロー。シェローにしては大胆な解釈はないが、人物の動きが音楽にぴたりと合い、エレクトラの異様な執念を描く。このあまりに非人間的な心理が、すべての人間の中にあるものであることも浮き彫りにしているかのようだ。

一言で言うと、指揮も演出も歌手たちもオーケストラも、すべてが素晴らしかった。私は高校生のころ、つまりは1960年代からこのオペラが大好きで、日本で上演された実演はもちろん、録音・録画すべてみているはずだ(1981年のウィーン国立歌劇場日本公演のニルソンの歌うエレクトラも聴いている!)。その中でも今回のライブビューイングは傑出している。

映像ではあるが、「エレクトラ」の最高の名演に触れることができて、実にうれしい。改めてこのオペラの凄さを思い知った。

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