トリオ・ワンダラーのベートーヴェンとパシフィカ・クァルテットのショスタコーヴィチ
2016年6月9日、三鷹芸術文化センターでトリオ・ワンダラーによるベートーヴェンのピアノ三重奏曲全曲演奏の二日目、第1・3、変ホ長調WoO38、「仕立て屋カカドゥの主題の夜変奏曲とロンド」、第7番「大公」を聴いた。トリオ・ワンダラーはこれまでナントと日本のラ・フォル・ジュルネで何度も聴いてきたが、実は私はどうもよさがわからない。雑な気がしてしまう。が、強く薦める人がいたので、再び聴いてみた。だが、やはり印象は変わらなかった。
もう少しじっくりと演奏してほしい気がしてしまう。意味なく速く、せわしげに演奏しているような気がしてならない。第三番の作品1-3のハ短調の曲も、あの若きベートーヴェンの人生に対する鬱積が伝わらない。「大公」も凛とした気品が伝わらない。私がこれらの曲に求めるものとは違うものをこのトリオは表現しているのだろう。「やはり、私にはよくわからない団体だ」ということを再認識した。
翌6月10日、横浜市鶴見区のサルビアホールでパシフィカ・クァルテットによるショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲連続演奏の初日、第1・2・7・3番の演奏を聴いた。これは素晴らしかった。ショスタコーヴィチの醍醐味を味わった。
サルビアホールで聴いたのは初めてだった。鶴見駅からすぐのところにある100名を少し超すくらいの規模のホールだが、音響面に優れているように思った。このホールで室内楽を聴くのはとても贅沢だ。
パシフィカ・クァルテットは1994年結成の弦楽四重奏団。もっと若いのかと思っていたら、今や中堅といえそう。アンサンブルがびしりとあって実に見事。時々テンポを動かすが、テンポの揺れが指揮者なしで完璧に行われるのは小気味いいほど。しかも、それが音楽の流れに沿っているので、まったく不自然ではない。音楽の表情も豊かで、完璧なアンサンブルによってショスタコーヴィチ特有のヒステリックといえるような激しい高揚が展開される。人生のやるせなさ、激しい焦燥、怒り、生そのものの激しい衝動。そのようなものが目の前で繰り広げられる。この団体の凄さだけでなく、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の素晴らしさも改めて知ることができた。第3番は素晴らしい名曲だと思った。
実は、とても忙しい。たまたまいくつかの仕事の締め切りが重なってしまった。しかも、コンサートや芝居、オペラなどに立て続けに行く予定。そんなわけで、今日はこれ以上文章を書く時間的余裕がない。このくらいにしておく。
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