« METライブビューイング「エレクトラ」 最高の名演に興奮 | トップページ | トリオ・ワンダラーのベートーヴェンとパシフィカ・クァルテットのショスタコーヴィチ »

横濱ニューオペラ顔見世興行、美男美女による最高に楽しい現代版浅草オペラ!

 横濱ニューオペラ顔見世興行をみた。最高のエンターテインメントだった。

8台の弦楽器とピアノ(指揮はロレンツォ・タッツィエーリと柴田真郁)による「威風堂々」に始まり、イタリアと日本の一流の歌手たちが次々と登場して、「カルメン」「ゴッドファーザー」「魔笛」「ラ・ボエーム」「メリー・ウィドウ」などなどのオペラやミュージカルのナンバーを歌う。「川の流れのように」までも出てきたのには驚いた。ほとんど脈絡がない。ただ、「真実の愛を見つけにいく」という寸劇が間に挟まる。これらの歌は、真実を見つけるための主人公たちの遍歴ということなのだろう。

 そのような寸劇が入るだけなのに、なぜか見ているほうは納得してしまう。私はわくわくしながら、休憩なしの2時間半、まったく飽きずに見入った。魔法にかかったかのよう。

 もちろん、歌のレベルの高さが成功の最大の要因だろう。私はソプラノのシモーネ・トーダロ・パヴァロッティにもっとも驚嘆した。ルチアーノ・パヴァロッティと関係があるのだろうか? 美しくてきれいにコントロールされたリリックな歌唱。フェデリーカ・ヴィタリもドスのきいた強いドラマティックなソプラノで素晴らしい。サルヴォ・グァステッラはちょっと声のコントロールが崩れるところがあったが、見事な美声。イタリア勢の三重唱は圧巻だった。

 日本人勢も負けていない。原田恵、小林未奈子、鷲尾麻衣、柴田紗貴子、楠野麻衣、長島由佳、神田さやか、藤田美奈子、川越塔子、郷家暁子といった歌唱と容姿のそろった女性歌手たちが次々と登場。男声陣も中鉢聡、樋口達哉、青柳素晴、清水良一、森口賢二、高橋正典、大山大輔、大塚博章(思うに、男のほうは女性よりも容姿的にはそろっていないような気がする)らと実に充実。

 そして、座長は秋川雅史。秋川さんの歌唱もほかの一流のオペラ歌手にまったく引けを取っていなかったことに正直言って私は驚いた。音程も確かでとてもきれいな高音。私の周囲の中年女性たちがどうやら秋川さん目当てのようで、秋川さんが登場するごとに大きな反応を示すのにはちょっと閉口したが、それは致し方のないところだろう。容姿の上で男の私から見ても、確かにずば抜けている。

 しかも、これらの歌手たちが演技も見事。日本人がドレスを着てオペラを歌うと鹿鳴館のようになって滑稽になることがある。芝居も学芸会風になりがちだ。だが、まったくそんなことはなく、笑うべきところで笑い、しんみりさせるところでしんみりさせる。

 そして、狂言回しのような役割で全体をつなげるのが俳優=ダンサーの古賀豊。あれこれの役を演じ、踊り、その美しい体の動きを見せる。びしっと姿勢が決まって見事。

 しかし、それ以上に、私は「真実の愛を探す」という要素を入れるだけでこのごたまぜの歌をまとめてしまったアイデア(おそらく演出の三浦アンコウさんによるのだろう)に脱帽。

 まるでフェリーニの後期の映画のよう。しっちゃかめっちゃかにあれこれのことが起こり、どんちゃん騒ぎのようになり、脈絡がないように見えて、なぜか最後には納得するというフェリーニしかできないと思っていた魔法を三浦さんが使っているのに驚いた。

 私は、しばらく前から浅草オペラに関心を持ってきた。私が子どものころ、テレビに浅草オペラ育ちの芸人が登場していた。とりわけ私はエノケンが大好きだった。エノケンの歌ったCDも愛聴している。浅草オペラのようなものが復活するとおもしろいのになあ・・・とずっと思っていた。

 今回の横濱ニューオペラを見て思った。これぞまさしく浅草オペラの現代版だろう。秋川雅史というスターを座長に据えて、浅草という今ではちょっと古めかしく少々ダサい場所ではなく、もっとおしゃれな横浜で、美男美女を取り揃えての浅草風オペラ。なるほど、これこそがオペラを大衆化する新しい道だろう。素晴らしい試みだと思った。

|

« METライブビューイング「エレクトラ」 最高の名演に興奮 | トップページ | トリオ・ワンダラーのベートーヴェンとパシフィカ・クァルテットのショスタコーヴィチ »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/63750826

この記事へのトラックバック一覧です: 横濱ニューオペラ顔見世興行、美男美女による最高に楽しい現代版浅草オペラ!:

« METライブビューイング「エレクトラ」 最高の名演に興奮 | トップページ | トリオ・ワンダラーのベートーヴェンとパシフィカ・クァルテットのショスタコーヴィチ »