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オペラ映像「フィデリオ」「ルチア」「ドン・パスクァーレ」「アンナ・ボレーナ」

 最近の大学は授業がみっちりある。なかなか休みにならない。私の勤める大学もごたぶんに洩れず、7月末になって、やっと夏休みに入った。

授業が終わって気が緩んだせいか、夏風邪を引いてしまった。特に体調が悪いわけではないのだが、喉が痛い。さかんに咳をしている。昨日は声を出すのがつらかった。かなりよくなったが、今日はずっと仕事をしないで、オペラ映像をみたり、本を読んだりしていた。

オペラ映像の感想を書く。

 

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ベートーヴェン「フィデリオ」20158月 ザルツブルク祝祭大劇場

 昨年のザルツブルク音楽祭での上演。NHK・BSでも放送されたもの。演奏の評判はよく、演出の評判はすこぶる悪かった。で、実際に映像を見てみると、私もほぼ評判通りの感想を抱いた。

 ヨナス・カウフマンのフロレスタン、アドリアンヌ・ピエチョンカのレオノーレ、オルガ・ベスメルトナのマルツェリーナは素晴らしい。ハンス=ペーター・ケーニヒのロッコもさすが。ただ、ドン・ピツァロのトーマス・コニエチュニーは少し不調ではなかろうか。ドン・フェルナンドのセバスティアン・ホレチェックはかなり不安定。

 フランツ・ヴェルザー=メストの指揮するウィーン・フィルについては、途中に挿入されるレオノーレ第三番は最高の名演だと思う。緊張感にあふれ、ドラマティックに躍動する。だが、第一幕ではところどころにバランスの悪さ、歌とのずれを感じた。

 クラウス・グートの演出については、確かによくわからない。舞台は巨大な作りの部屋になっている。登場人物が巨人の家に紛れ込んだように見える。場面転換の際、音楽が途切れ機械音が入り、登場人物を分断するような敷居がしばしば現れる。レオノーレとピツァロに黙役の分身が登場し、レオノーレの分身は手話のように手を動かして何かを伝えようとする。最後の場面でも、フロレスタンとレオノーレは幸せになるのでなく、レオノーレは不満を持ったままだ。

私には場面転換時の音は空爆を表わすものに思えた。空爆が行われ、世界が分断され、人々の生の声が圧殺され、現代に至るまで人々は自分の心を素直に外に出すことができずにいる。人間は卑小化され、フロレスタンのような自由と正義のために戦う人間はいまだに登場していない。そのような現代社会の欺瞞を、グートは描こうとしているように思えた。とはいうものの、あまり音楽とは関係のなさそうだ。

といいつつ、イタリア・オペラを何本も見た後にベートーヴェンのオペラを見ると、やはり音楽の深みに感動する。自分がドイツ音楽好きだということことを改めて強く思う。

 

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ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」2006年ベルガモ、ドニゼッティ劇場

 全体的にあまり感銘は受けなかった。デジレ・ランカトーレがとても良い歌手だということは知っているが、ルチアを映像で見ると、とびっきり素晴らしいとは言えないことに気付く。エドガルドを歌うロベルト・デ・ビアージョなどの男声陣もあまり強力ではない。アントニーノ・フォリアーニの指揮するベルガモ・ガエターノ・ドニゼッティ音楽祭管弦楽団もあまり機能性が高いとは言いがたいように思った。残念ながら、夢中になってみることができなかった。

 

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ドニゼッティ 「ドン・パスクァーレ」2006年 テアトロ・アリギエーリ

  視覚的には理想の上演といえるだろう。ドン・パスクァーレを歌うクラウディオ・デズデーリもノリーナを歌うラウラ・ジョルダーノもまさしく登場人物そのもの。とりわけジョルダーノはあまりに美しくチャーミング。マラテスタのマリオ・カッシ、エルネストのフランシスコ・ガテルも容姿的にはとても魅力的。だが、音楽的には、どの歌手にも、私はあまり魅力を感じなかった。もちろん一流の歌手たちだと思うが、声に伸びがなかったり、音程が不安定だったり。

 ルイジ・ケルビーニ管弦楽団を指揮するのはリッカルド・ムーティ。さすが立派な指揮ぶりだが、わくわくするような面白さを引き出しているようには思えなかった。アンドレア・デ・ローザも手際はいいが、とりわけ面白いとは思わなかった。少々不満が残った。

 

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ドニゼッティ 「ドン・パスクァーレ」2013年 グラインドボーン歌劇場

もう1本、「ドン・パスクァーレ」。こちらは大いに楽しんだ。歌手はそろっている。ドン・パスクァーレを歌うアレッサンドロ・コルベッリが張りのある声で実に芸達者。自由自在に歌いまくる感じが実にいい。若い妻を持とうとする60過ぎの男の滑稽な真剣さと人の良さがとても良く伝わる。ノリーナのダニエル・ドゥ・ニースも躍動感があってとてもいい。登場してすぐはちょっと硬いがすぐに舞台狭しと歌いまくる。マラテスタのニコライ・ボルチェフもエルネストのアレク・シュレーダーも張りのある美声。こわごわ歌っている感じのあったテアトロ・アリギエーリの上演と違って、みんなが自由溌剌。実に楽しい。

エンリケ・マッツォーラ指揮によるロンドン・フィルも見事。そして、マリアム・クレマンの演出も気がきいていて実に楽しい。さすがグラインドボーン。

 

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ドニ
ゼッティ 「アンナ・ボレーナ」 2013年 フラヴィオ・ヴェスパシアーノ劇場

(ミラノ・スカラ座における1840年版)

 ファビオ・ビオンディの指揮するエウローパ・ガランテの演奏は素晴らしい。躍動し、生き感があり、実にドラマティック。しかし、歌手陣に関しては、かなり問題がある。これはどういう歌手たちなのだろう。アンナ・ボレーナを歌うマルタ・トルビドーニはこの歌手陣にあっては聴いていられるほうだと思ったが、エンリーコ8世のフェデリコ・ベネッティとペルシー卿のモイセス・マリン・ガルシアについては、私には音程が不安定で、声に伸びがなく、聞いていて息苦しささえ覚える。聴き続けるのがつらかった。

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