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映画DVD「シェルタリング・スカイ」「無常」「曼荼羅」、ちょっとオリンピックのこと

 2016822日。午前中出かけて夜かなり遅くまで都心ですごすつもりでいたら、台風のために自宅を出られなくなった。腹を決めて、DVDをみたり、テレビをみたりして、久しぶりにゆっくり過ごした。

ところで、昨日BSで放送された「ペレアスとメリザンド」の録画をみようとしたら、「予約を中断しました」という表示が出て、第一幕の途中までしか録画されていなかった。残念。一体、何が起こったんだろう。

数日前から見ていた映画DVDの感想をまとめる。

 

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「シェルタリング・スカイ」 ベルナルド・ベルトルッチ監督 1990年

 前半、少し退屈だった。映像は素晴らしい。北アフリカの風景、そこで暮らす人々。パゾリーニの「奇跡の丘」や「アポロンの地獄」を思い出すような現地の人々の動き。それらは心惹かれる。ただ、北アフリカを訪れたデブラ・ウィンガーとジョン・マルコヴィッチの演じるアメリカの夫婦の心情、行動を共にする男性(キャンベル・スコット)の関係が

わかりにくく、途方に暮れた。

だが、夫の死んだのちの展開はさすがベルトルッチ。一人で北アフリカをさまよい、現地の男の身を任せ、激しく愛されるが、現地の人々の拒否にあう。その空虚感、虚脱感の描き方が素晴らしい。最後の場面で、北アフリカに到着したばかりに立ち寄ったカフェに戻る。北アフリカの持つ呪術、生きることの不思議を感じさせる。

 

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「無常」 実相寺昭雄 監督  
1970

 実相寺昭雄の映画がDVDで発売されているのを知って購入。封切時に新宿のATGでみて衝撃を受けた映画だ。私は学生時代、仏教に興味を持ち、仏典を読み、京都・奈良に仏像を見に行き、仏教的なことを人にしゃべったり書いたりしていたが、それがこの映画の影響だったことを久しぶりに思い出した。

 今見ても衝撃的な映画だ。もちろん、あまりに全共闘的、あまりに文学的で、ある意味であまりに「ベタ」だが、それでも改めてみてまた感動した。

実の姉と交わり、仏像つくりの恩師の妻と交わり、何人もの人間を死に追いやり、煩悩の限りを尽くし、そうでありながら仏像を愛し、仏師に弟子入りして自分の煩悩のすべてを観音様の中に昇華しようとする青年(田村亮)の生きざまを描く。

きっと当時の私はこの青年のような目つきをしていたのだろうと思う。社会を敵視し、その俗物性を憎みながらも、煩悩に身を焦がし、その衝動に身動きが取れずにいた。この映画は当時の若者の意識そのものを反映していた。実相寺監督は私よりは20歳ほど年上だと思うが、その鋭い目に感服。お寺のお子さんだけあって仏教に対する理解も深そう。

 モノクロの映像も美しい。大胆な性描写。そして新鮮な構図によって仏像、寺院、石段が描かれる。バッハの無伴奏パルティータ第1番が効果的に、衝撃的に使われる。

 たぶん、パゾリーニの「奇跡の丘」「アポロンの地獄」「王女メディア」とともに私の人生にもっとも大きな影響を与えた映画がこれだったのだと思い当たった。・・・ただ、今となっては私もかつての牙を失ってしまったことを改めて思う。間違いなく、当時軽蔑していた俗物の大人になっている!

 

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「曼荼羅」  実相寺昭雄 監督 1971年

「無常」に感動した私は、封切られてすぐにこの映画を見た。「無常」ほどの感動を覚えずに失望した記憶がある。今見ても、映画の出来としてはよくないと思う。まるで学生の作った映画のような雰囲気。学生運動から脱落した若者(まさしく私と同世代)が宗教や哲学、歴史についての生硬な議論を交わす。確かに、当時、私もこのようなことを考え、話し、書いた記憶がある。オンナの子とのデートでも喫茶店でこんな話をしていた。そんな時代だった!

 ただし、当時、あまりに荒唐無稽と思ってみたのだったが、オウム真理教事件が起こった後で見ると、予言的といえるかもしれない。単純再生産=農業=生殖信仰(エロチシズム)=死姦・神との性交への憧れ=無時間の渇望を唱える小さなカルト集団。「立川流」がヒントになっているのかもしれない。主人公の若者二人がたまたまその集団とかかわり、そのうちの一人(清水紘治)はその集団にのめりこむ。もう一人(田村亮)はそこから距離を置く。

 おそらくマルクス主義を奉じた全共闘運動が、実は無時間に憧れるユートピア主義でしかなかったこと、このカルト集団のように自滅するしかなかったことを語っているのだろう。同時に、実相寺は、現代社会の進歩主義への強い抵抗(最後の場面の時計の音と新幹線に象徴される)も訴えかけている。

 全共闘運動は、マルクス主義運動などではなく、実は当時の俗物の大人たち(つまりはブロジョワを理想とする社会人)、そしてそれを支える進歩主義への反抗にほかならなかったと改めて思う。

 

 ついでにオリンピックについてほんの少し。

 ニュースや特集番組を中心にリオ・オリンピックの放送をテレビで見ている。時々涙を流している。前から水泳や柔道は好きだが、レスリング、バドミントン、卓球がなかなか面白いことを知った。400メートルリレーの銀メダルもよかった。

 ただ、シンクロナイズド・スイミングは私にはどうもよくわからない。演技者が登場するときの腕を大きく上げ、みんな同じような明るい表情の顔を上に向けて歩く姿勢、水の上でのカクカクした動きに大きな違和感を覚える。新体操もさっぱりわからない。リボンを投げたり輪っかを投げたりして何が楽しいんだろう、ふつうの踊りのほうがずっと楽しいのに・・・という感想を抱いてしまう。そして、競歩。いくらなんでもあの歩き方は不自然だろう。・・・でもまあ、これはすべて偏屈な老人の独りよがりの感想なんだろうが。

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