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ジョルダーノ作曲のオペラ映像をみた

 夏休みが終わり、秋学期の授業が始まった。久しぶりに授業をすると、とても疲れる。そんなわけで、家に帰ると原稿を書くなどの仕事をする気分になれず、音楽を聴いたり、テレビを見たり。

 少し前までまったく関心がなかったが、ジョルダーノのオペラの映像をいくつかみてみたので、感想を書く。

 

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ジョルダーノ 「アンドレア・シェニエ」 2015年 コヴェント・ガーデン王立歌劇場

 私がよく知る唯一のジョルダーノのオペラ。昔、フランス文学を学んだので、そのころから、革命精神をたたえつつも、フランス革命時、ギロチンによって処刑された詩人アンドレ・シェニエには関心を持っていた。ジョルダーノのこのオペラは、そのアンドレア・シェニエを主人公にしている。もちろん、そこはイタリアオペラなので、メロドラマになっているが、それはそれでとてもドラマティック。

 シェニエを歌うヨナス・カウフマンがやはりあまりに「カッコイイ」。ファウストよりもウェルテルよりもカニオよりもドン・ホセよりも、カウフマンは悲劇の詩人アンドレア・シェニエにぴったり。知的でりりしい歌唱。マッダレーナを歌うエヴァ=マリア・ウェストブルックも実に美しく可憐(もちろん、見た目にはちょっと太めだが)で、強い声で見事に歌い上げる。そして、ジェラール役のジェリコ・ルチッチが、見事な存在感。この三人が歌いあげるのだから、最高の上演になって当然だろう。

 アントニオ・パッパーノの指揮も、うねりがあり、ドラマがあり、音楽的な厚みがある。デイヴィッド・マクヴィカーの演出も豪華で動きがあり、自然のうちに感情移入できる。ジョルダーノのオペラの魅力がよくわかる。

 

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ジョルダーノ「フェドーラ」 1993年 ミラノ、スカラ座

 有名なオペラの有名な映像だが、イタリアオペラに疎い私は初めて「フェドーラ」をみた。もちろん、この上演をみるのも初めて。なかなかおもしろい。とてもドラマティック。第三幕はいやおうなしに感情移入させられる。

 歌手陣に関しては、あまりのすごさに圧倒されるしかない。まさしく伝説の歌手たち。フェドーラのミレッラ・フレーニとロリスのプラシド・ドミンゴは言葉を絶する凄さ。実演を聞くとどんなに凄まじいことか。オルガのアデリーナ・スカラベッリ、デ・シリエのアレッサンドロ・コルベッリも文句なし。ジャナンドレア・ガヴァッツェーニの指揮もとても盛り上がりがあって実にいい。

 

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ジョルダーノ 「王様」 2006年 フォッジャ テアトロ・ジョルダーノ

 私はこのオペラがとても気に入った。70分そこそこの短い童話風のオペラ。チャイコフスキーの「イオランタ」とプロコフィエフの「三つのオレンジへの恋」を合わせたような雰囲気とでもいうか。村の男性の婚約していた娘ロザリーナは、通りかかった王様に恋をして婚約を破棄するといいだす。許婚者や両親が王様に直訴すると、王様はカツラを脱いで禿げ頭を見せ、ロザリーナを恋の病からいやす。そのようなとぼけた話をちょっと調子ッパずれの音楽でおもしろく見せてくれる。伝令が語るとき、「ローエングリン」の第1幕のファンファーレの調子を外したパロディが聞こえるなど、遊びの部分も多い。

 ジョルダーノという作曲家は時にきわめて感傷的でロマンティックな音楽を書くが、耽溺しているわけではなさそうだ。冷めたところが同居している。そこがおもしろい。

 ロザリーナを歌うパトリツィア・チーニャは美しい声で、コロラトゥーラの確かな技巧を持っている。コロンベッロのファビオ・アンドレオッティ、王様のジュゼッペ・アルトマーレもとても安定している。

 カピタナータ交響楽団を指揮するのはジャンナ・フラッタ。妙齢のきれいな女性。ただ、オケの精度はあまり高くないし、指揮の技術もそれほど高くなさそう。しかし、全体的に十分に楽しめる。掘り出し物のオペラだと思った。

 

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ジョルダーノ 「マルチェッラ」 2007年 マルティナ・フランカ

 60分を少し超すくらいのジョルダーノの短いオペラ。芸術家きどりの自堕落な生活を送っていた青年が生真面目な娘と出会い、恋をする。が、実はその青年はよその国の王子だった。民衆に壊れて故国に帰るために身分違いの娘と別れる。

 実はあまりおもしろいと思わなかった。メルヘン風のストーリーなのだが、聞こえてくる音楽は十分に生真面目で感情移入をうながす。だが、そうなるとストーリーのあまりの不自然さが気になる。

 しかも、演出(アレッシオ・ピッツェッキ)のために意図的にそうしているのか、それともタイトルロールのソプラノ、セレーナ・ダオリオの演技でそう見えてしまうのかわからないが、マルチェッラはかなりエクセントリックで、狂気に冒されているように見える。精神を病んだ女性が若者と出会い、その人が王子と知っていっそう精神を引き裂かれる・・・。そんな物語に見える。だが、そうだとすると、音楽に緊迫感がない。結局、よくわからないオペラだと思った。

 マルチェッラ役のダオリオは容姿もいいし、きれいな声。王子ジョルジョ役のダニロ・フォルマッジャも伸びのある声。二人とも悪くないとはいえ、感動するほどではなかった。マンリオ・ベンツィの指揮するイタリア国際管弦楽団はかなり貧弱な音。どうも一流の歌劇場の名演というわけではなさそうだ。

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