« 東京オペラ・プロデュース公演 「グリゼリディス」の日本初演をみた | トップページ | 伯母の他界、懐かしい人からの電話。 »

ロッシーニのオペラ映像「幸運な間違い」「アルジェのイタリア女」「セビーリャの理髪師」

 先週は、小さな講演を二つ続け、その後、大学の授業、そして週末は二日続けてオペラをみたため、少々くたびれた。本日(20161010日)は少しゆっくりした。午後、老人ホームの母のところに行ったが、それ以外は、本を読んだり、昼寝したり、DVDをみたり。仕事らしいことは、久しぶりに一切しなかった。

 ニュースでアンジェイ・ワイダ監督が亡くなったことを知った。パゾリーニ、アントニオーニとともに私が最も愛した映画監督だった。「灰とダイヤモンド」を初めて見た時の興奮を今も思い出す。不朽の名作だと思う。「地下水道」「ダントン」「カティンの森」も大傑作だった。そのほか「白樺の林」「約束の地」「ヴィルコの娘たち」「菖蒲」もとても感動してみたのを覚えている。合掌。

 ロッシーニのオペラ映像を3本みたので、感想を書く。

 

728


ロッシーニ 「幸運な間違い」2015年 ドイツ、バート・ヴィルドバート

 

 ロッシーニのごく初期のオペラ。タイトルだけは知っていたが、初めてみた。ロッシーニのオペラとしては少々魅力に欠ける。やはり、もう少し後の作品のほうがずっとおもしろい。

 とはいえ、やはりそこはロッシーニ。のちのロッシーニに比べれば面白さに欠けるとはいえ、それはそれでとてもよくできたオペラで、音楽もおもしろい。多分ロッシーニはまだ10代。10代の若者の作曲したものとしては驚異的といえるだろう。モーツァルトに匹敵帰する、いや少なくともオペラにおいてはそれを凌ぐ才能といえるのではないか。それがわかるのだけでもとても意味のあるオペラ映像だと思う。

イザベッラのシルヴィア・ダッラ・ベネッタ、タラボットのロレンツォ・レガッツォ、ベルトランド公爵のアルタヴァスト・サルグシャンの三人の主役は歌唱の面でも容姿の面でも申し分ない。とりわけベネッタの歌は清純でありながらもほのかな色気があって、しかも強靭。素晴らしい歌手だと思う。そのほか、オルモンドのバウルザン・アンデルザノフもバトーネのティツィアーノ・ブラッチも実にいい。ヨッヘン・シェーンレーバーの演出は舞台を現代に移しているが、特に違和感はない。アントニオ・フォリアーニの指揮も若きロッシーニの才能の冴えを存分にわからせてくれる。すばらしい映像だと思う。

 

759


ロッシーニ 「アルジェのイタリア女」 1986年 メトロポリタン歌劇場

 1986年の映像。最近のロッシーニ演奏に比べるとテンポが遅く、歌唱法も違い、オーケストラもロマンティックすぎる気がしないでもない。時代遅れであることは間違いないだろう。とはいえジェイムズ・レヴァインの指揮はメリハリがあり、勢いがあってとてもいい。さすがというべきか。

 歌手の中では、マリリン・ホーンが圧倒的に素晴らしい。往年のアメリカ声楽界の大スターとして名前だけは知っていたが、たぶんこのメゾ・ソプラノ歌手の歌を聴くのは初めてだと思う。はずみのある太い声で技巧的な歌を難なく歌いこなし、ロッシーニの愉快で生気に満ちた世界に巻き込む。こんなにすごい歌手だったなんて!(あわててネットでこの歌手のCDを注文した)。パオロ・モンタルソロの歌うムスタファも見事な歌。リンドーロのダグラス・アルステッドがちょっと弱いが仕方がないだろう。

 演出はジャン=ピエール・ポネル。さすがにとてもおもしろい。今見ても、まったく違和感なく楽しめる。ただ、イスラム教を少々皮肉っているところがあるので、今、このまま上演すると問題が起こるかもしれない。いずれにしても、全体的にきわめて満足できる映像だ。

 

 

134


ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」 2001年 チューリヒ歌劇場

 文句なしに素晴らしい。オンラインのHMVで購入したが、安売り中でなんと500円だった! カバーがドイツ語タイトルになっているので、歌もドイツ語版ではないかと不安だったが、ちゃんとイタリア語で歌われている。もしかしたら、私の所有しているこのオペラの中のナンバーワンの映像かもしれない。

 歌手は全員が見事。そのなかでも、ロジーナのヴェッセリーナ・カサロヴァがさすがの存在感。高音が実に美しく、しかも歌に愛嬌がある。個性を表に出して自在に歌う。なるほどロジーナというのはこんな娘なのだろうと納得させるだけの力がある。そして、なんといってもバジーリオを歌うニコライ・ギャウロフが、いかにもスケールの大きな奇人ぶりを発揮して実におもしろい。全盛期の声は失われているとはいえ、十分に凄まじい。

 それに比べると小粒だが、アルマヴィーヴァ伯爵のレイナルド・マシアス、バルトロのカルロス・ショーソン、フィガロのマヌエル・ランサ、いずれもまさしく高貴な恋する伯爵や、俗っぽい医師、如才ない理髪師に見えるし、歌唱もみんな最高に素晴らしい。

 グリシャ・アサガロフの演出は、舞台を現代に移しているが、とてもしゃれている。バロトロの家のそれぞれの部屋が扇子のような背景になっているのもおもしろい。閉塞感を描いているのだろう。そうでありながら、ユーモラスであちこちで笑いを誘う。指揮のネッロ・サンティも申し分ない。厚みのある音で躍動感にあふれている。大満足の1枚!

|

« 東京オペラ・プロデュース公演 「グリゼリディス」の日本初演をみた | トップページ | 伯母の他界、懐かしい人からの電話。 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/64328763

この記事へのトラックバック一覧です: ロッシーニのオペラ映像「幸運な間違い」「アルジェのイタリア女」「セビーリャの理髪師」:

« 東京オペラ・プロデュース公演 「グリゼリディス」の日本初演をみた | トップページ | 伯母の他界、懐かしい人からの電話。 »