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堀米+カメラータ・ザルツブルクのモーツァルト協奏曲全曲に心を洗われた

 2016年11月21日、杉並公会堂大ホールでカメラータ・ザルツブルクのコンサートを聴いた。指揮はハンスイェルク・シェレンベルガー、ヴァイオリンの堀米ゆず子が加わって、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲全5曲演奏。私はモーツァルト中期の曲はかなり好きで、昔よくレコードで聞いていた。ときどきこのような音楽を聴くと、心を洗われる気になる。5曲の協奏曲を一晩ですべて聴けるとあって、雨の中を出かけた。

 とても良い演奏だった。中庸を得た演奏といってよいだろう。速すぎもせず、遅すぎもせず、メリハリをつけすぎもせず、それでいて要所要所でしっかりと味わいがあり、起伏がある。技術をひけらかすでもなく、過度に楽しませようとするのではなく、しかし、間違いなく、そこにいるものを幸せにする。ああ音楽っていいなあ・・・としみじみと思った。

 中期のモーツァルトの音楽に人生という余計なものを加えようとすると、音楽そのものが崩れてしまう。ロマンティックな思い入れを加えても、音楽がつまらなくなる。その点、堀米ゆず子の演奏は見事だった。1980年に堀米さんがエリザベート王妃国際音楽祭コンクールで優勝した後、私は何度かこの人の演奏を聴いた。率直で、力強くて、しかも繊細で、とても楽しく聴けた。今回、久しぶりに聴いて、いっそうの円熟を感じた。つい聞き漏らしがちなモーツァルトの音の一つ一つをとても丁寧に、しかし生き生きと演奏してくれた。

 シェレンベルガー指揮のカメラータ・ザルツブルクも、アンサンブルがよく、きわめて的確に音楽に陰影をつけていく。目立つことはしないが、見事なプロの技。

 私はモーツァルトに詳しいわけではないので、実はこれらの協奏曲についても、実演は数回しか聴いていない。たぶん第1番は今回初めて聴いた。どの曲も初めて聴くカデンツァだったような気がする。とても鮮烈なカデンツァだった。

 作曲年代にそれほど差はないとされているが、やはり第1・2と3・4・5の間には大きな技術的な差があることを改めて感じた。とはいえ、第1・2も実にチャーミング。そして、第5番は稀有の名曲だと認識した。人生への思いやロマンティックな感情などといった余計なものがなく、ただひたすら音楽の楽しみというところが、実にいい。しばらく、オペラや後期ロマン派の曲ばかり聴いた後では新鮮な気持ちになる。満足して雨の中を帰宅した。

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