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ウィーン国立歌劇場公演「ワルキューレ」 最高の体験!!

2016116日、ウィーン国立歌劇場公演「ワルキューレ」をみた。圧倒的な上演だった。最高の体験だった。

歌手陣が現代最高の顔ぶれ。何よりも、ニーナ・シュテンメ(昨日、METライブビューイングの「トリスタンとイゾルデ」では、配布された配役表に基づいてステンメという表記にした)のブリュンヒルデが言葉をなくすような歌と演技。これまでのブリュンヒルデ歌手以上に豊かな声量と美しい声なのだが、女性らしい柔和な声質と容姿を備えている。しかも表現力が実に豊か。第三幕のヴォータンとのやり取りなど、涙なしには聴いていられない。私はCDや映像ではこの人の歌に親しんできたが、実演は初めて。最高のワーグナー歌手であることを確認した。歴史に残る名歌手の一人に数えてよいと思う。

 ヴォータンのトマス・コニエチュニーも実にいい。豊かな声量で強く歌い、迫力がある。ただ、あまり高貴な声質ではないので、これまでヴォータンを得意にした歌手たちとは多少異質といえるかもしれない。しかし、もちろんこれはこれで別のタイプのヴォータンとしてとてもいいと思う。

 フリッカのミヒャエラ・シュースターも強い声がこの役にぴったり。本当にこの人は癖のある役がうまい。憎々しく皮肉たっぷりなフリッカ。ジークリンデのペトラ・ラングも、ちょっと癖のある歌い方ながら、虐げられ、ひたむきなジークリンデ像を作り上げて見事。容姿的にもぴったりだった。ジークムントのクリストファー・ヴェントリスも見事な美声で若々しく歌い、とてもよかった。そして、フンディングを歌ったアイン・アンガーも以下にも悪役の強い声が素晴らしかった。歌に関してはまったく文句はない。

 ウィーン国立歌劇場管弦楽団も素晴らしいが、指揮のアダム・フィッシャーがすごいというしかない。第一幕の前奏の最初のいくつかの音で観客も一挙にワーグナーの世界に引きずり込んでいく。昔風のワーグナー指揮者の、小細工をしないでじわじわとうねりを作るのとは違って、波乱万丈で、ドラマティックでキレの良いワーグナー。しかも、それほど主知的な感じではなく、うねりがあり、じっくりとした感情の高まりもある。なるほどこんなワーグナーもあるのだと思った。

 演出はスヴェン=エリック・ベヒトルフ。簡素な舞台で、特に新しい解釈はなかったように思う。第三幕では、大きな木馬がいくつか据えられ、それらがCGによる日によって燃え上がるように描かれる。

 何はともあれ、音楽的にはこれは最高の上演だった。感動し、涙を流し、全身痺れ、オーケストラの音とすべての歌手の声にうっとりし、それぞれの力量に感服した。

新国立劇場「ワルキューレ」、マリインスキー劇場公演「エフゲニー・オネーギン」、東フィル「イリス」(演奏会形式)、ウィーン国立歌劇場「ナクソス島のアリアドネ」、藤沢市民オペラ「セミラーミデ」・・・とこのところとても素晴らしいオペラをいくつか聴いてきたが、その中でも今日の「ワルキューレ」は格別だった。いやあ本当にワーグナーはいいなあ・・・、ワーグナーを好きになったおかげで心の底から感動するという体験を何度もさせてもらったな・・・とつくづく思った。

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コメント

私も初日聴きましたが、凄かったですね。
アダム・フィッシャーの話が出てました。
http://blog.livedoor.jp/haydnphil/archives/52410579.html

投稿: | 2016年11月 9日 (水) 05時27分

コメントをお寄せくださった方
情報、ありがとうございました。記事を読んで驚きました。「ワルキューレ」を見ながら、私も一、二度、「あれ、歌手が出だしを間違えたかな?」と思ったところがあったのですが、何事もなく進んでいったので、私のカン違いだろうと思っていました。なるほど、演奏家たちはそのような緻密で高度な仕事をしているんですね!

投稿: 樋口裕一 | 2016年11月10日 (木) 09時35分

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