« パーヴォ・ヤルヴィ+ドイツ・カンマーフィルのブラームス3番・1番 | トップページ | 新国立「セビリアの理髪師」 とても満足 »

オペラ映像「マリア・ストゥアルダ」「メディア」「セビーリャの理髪師」「メフィストーフェレ」「ラ・ジョコンダ」「アドリアーナ・ルクヴルール」「アルルの女」「ラ・ワリー」

 しばらく前からイタリア・オペラの映像を続けざまに見ていたが、オペラやコンサートの公演が続いていたので、ここの感想を書く余裕がなかった。やっとコンサートが一段落したので、まとめて感想を書く。

 

773


ドニゼッティ 「マリア・ストゥアルダ」 2012年 メトロポリタン歌劇場(

 さすがMETのドニゼッティ。最高の歌手たち。圧倒的なのがタイトルロールのジョイス・ディドナート。歌の技術、声の威力がすごいだけでなく、まさしく迫真の演技。名歌手は名優であるというのがよくわかる。人間性を表に出し、苦悩をぐっとおさえてプライドを通す女王を演じている。

エリザベッタを歌うエルザ・ファン・デン・ヒーヴァーも、このわがままで非人間的的な要素をうまく歌って、ディドナートに負けない歌を披露する。この二人の掛け合いが素晴らしい。レスター伯爵のマシュー・ポレンザーニ、セシルのジョシュア・ホプキンス、タルボのマシュー・ローズも文句なし。デイヴィッド・マクヴィカーの演出もわかりやすくて豪華でドラマティック。マウリツィオ・ベニーニの指揮も、ドニゼッティ通でない私には、まったく不満はない。メトロポリタン歌劇場の圧倒的な力を見せつけられる映像ではある。

 




182


ケルビーニ 「メディア」2004年 ササーリ劇場

 歌手陣はとてもよい。デーニャ・マッツォラ・ガヴァッツェーニのメディアは、「毒婦」を激しく強く演じ、歌も迫力がある。グラウチェのエリザベッタ・スキャーノもメディアと対照的な清楚な娘をしっかりと歌う。カルロ・チーニのクレオンテも、チェザーレ・ルータのジャゾーネも、私には特に文句はない。

ただ、このオペラ映像を最後まで見るのはかなりつらい。エリック・ハルの指揮するマリアリーザ・カロリス演奏協会管弦楽団がかなり雑で、しかも存在を強く主張するうえ、もしかしたら、録音の仕方に原因があるのかもしれないがオケと歌のバランスもよくない。

 

085


パイジェッロ 「セビーリャの理髪師」 2005年 オルフェオ劇場

 パイジェッロ作曲の「セビーリャの理髪師」の映像を見るのは2本目。前回見た映像(ローマ室内歌劇団の1970年の大阪フェスティバルホールでの公演)はかなりおとなしくて、あまりに貴族的だったが、それよりはずっと躍動感にあふれている。モーツァルトやロッシーニを思わせるところがたくさんあり、とてもメロディアスで、しかも楽しい。ただ、やはりロッシーニのオペラのほうが楽しいのは、単に聴き慣れているからではなかろう。とはいえ、ロッシーニがこのオペラをかなり意識して、それを上回るオペラを作ろうとしたのがとてもよくわかる。第二幕の嵐の場面など、ロッシーニはかなりパイジェッロの影響を受けているようだ。

 演奏はとてもレベルが高い。アルマヴィーヴァ伯爵のミルコ・グァダニーニ、フィガロのドナート・ディ・ジョイア、バルトロのマウリツィオ・ロ・ピッコロはいずれも音程もよく声も伸び芸達者でもある。ロジーナのステファニア・ドンツェッリもなかなか可憐。

 ジョヴァンニ・ディ・ステーファノの指揮するジョヴァンニ・パイジェッロ音楽祭室内管弦楽団も躍動感があってなかなか良い。ロゼッタ・クッキの演出もわかりやすい。ただ、マルチェリーナという名前の黙役が登場するが、これはパイジェッロのオペラには登場しない役のはず。おそらく「フィガロの結婚」のマルチェリーナ、そしてロッシーニの「セビーリャの理髪師」のベルタから着想を得たのだろうが、あまり意味がないように思えるのだが。

 

877


アリーゴ・ボーイト 「メフィストーフェレ」 2008年 パレルモ

 このオペラはかつて何かの映像でみた記憶はあるが、さしたる印象はなかった。が、今回の映像をみて、とてもおもしろいと思った。ヨーロッパの一流歌劇場が総力を挙げて上演すると、通常の演目に挙げられていないオペラでもこれほど面白く上演できるのだという典型例といえるかもしれない。

 歌手陣は世界最高の人たち。メフィストーフェレを歌うフェルッチョ・フルラネット、ファウストを歌うジュゼッペ・フィリアノーティ、マルゲリータとエレナを歌うディミトラ・テオドッシュウ。この三人の底力たるや凄まじい。マルタのソーニャ・ザラメッラ、ワグネルのミンモ・ゲッギもとてもいい。

ボーイトは台本作家としても才能を発揮した人だが、この「メフィストーフェレ」の台本はあまり出来がよくない気がする。ゲーテの「ファウスト」の表面だけをなぞっている感じ。が、音楽はなかなか魅力的だ。マルゲリータの悲しい歌はテオドッシュウの名演技もあってとても感動的。ファウストの死の場面も盛り上がりが素晴らしい。

 ステーファノ・ランザーニの指揮によるパレルモ・マッシモ劇場管弦楽団も、ジャンカルロ・デル・モナコの演出もとてもおもしろかった。文句なく楽しめた。

 

965


アミルカーレ・ポンキエッリ 「ラ・ジョコンダ」2005年 アレーナ・ディ・ヴェローナ

 とても充実した映像だと思う。アルヴィーゼ役のカルロ・コロンバーラだけが少し弱いが、歌手陣はそろっている。ジョコンダのアンドレア・グルーバー、エンツォのマルコ・ベルティ、バルナバのアルベルト・マストロマリーノ、ラウラのイルディコ・コムロージはとてもよい。ただ、これはきっと人の識別が苦手な私の能力に問題があるのだと思うが、エンツォとバルナバとアルヴィーゼが外見上でときどき区別できなくなって困った。よく似た体形、よく似た顔、しばしばよく似た服装。

 野外劇場でのオペラなので、どうしても大味。ドナート・レンゼッティのアレーナ・ディ・ヴェローナ管弦楽団も、繊細さに欠ける。ただ、スケールが大きく、見るものをドラマに巻き込む点においては、見事といってよいだろう。

 この映像の最大の魅力はピエール・ルイージ・ピッツィの演出にあるだろう。壮大で美しく、場面全体を生かした動きが素晴らしい。

 このオペラの魅力を十分に伝える映像。全体的にはとても良かった。

 

621


チレア 「アドリアーナ・ルクヴルール」2009年 トリノ、レージョ劇場

 チレアのオペラの全曲を見たのは、これが初めて。とても良い演奏だと思う。

 アドリアーナのミカエラ・カロッシも堂々たる歌いっぷり。マウリツィオのマルセロ・アルバレスもさすが。ブイヨン侯爵夫人のマリアンヌ・コルネッティ、ミショネのアルフォンソ・アントニオッツィも味がある。レナート・パルンボの指揮するトリノ・レージョ劇場管弦楽団にも文句はない。

 ただ、このオペラそのものにどうしても違和感を拭い去ることができなかった。甘ったるいメロディ、情緒をかきたてるオーケストレーション。私がずっとイタリアオペラを聴かなかったのは、このような雰囲気が苦手だからだった。かなり苦手意識を払しょくしたつもりだったが、やはりこれはダメだった。

 

539


チレア 「アルルの女」 20139月 イェージ、ペルゴレージ劇場

「アドリアーナ・ルクヴルール」をおもしろいと思わなかったので、きっとこれもダメだろうと思いつつ、せっかく購入したのだからと気を取り直して、見てみた。

 ドーデの短編に基づくと思うが、だいぶストーリーが異なる。台本はよくできていると思う。ヴェリズモ・オペラにふさわしい題材。だが、やはりこんなに甘ったるいメロディだと、せっかくの緊迫感が台無しになると私には思える。

 演奏はとてもいい。フェデリコのドミトリー・ゴロフニン、ヴィヴェッタのマリアンジェラ・シチリア、ローザ・ママイのアンヌンツィアータ・ヴェストリともにしっかりした美声で歌いまわしも実にうまい。ロゼッタ・クッキの演出、フランチェスコ・シルフォの指揮も、私には特に不満はない。だが、大変残念ながら、音楽は私には退屈だった。

 いずれにせよ、チレアは私には理解できない作曲家のようだ。

 

511


カタラーニ 「ラ・ワリー」2012年 インスブルック、チロル州立劇場

 イタリア・オペラにうとい私は、1981年にジャン・ジャック・ベネックス監督の映画「ディーバ」の中で歌われているアリア「さようなら、ふるさとの家よ」を聴くまでカタラーニの「ラ・ワリー」というオペラの存在そのものを知らなかった。このアリアを知ってからも、純情な女性ワリーのメロドラマだとばかり思っていた。が、今回、初めて映像を見てびっくり。これは、イタリア・オペラでは決して多くない私好みのオペラではないか! カタラーニはワーグナーに強い影響を受けたという。まさしくワーグナー風であり、シュトラウスの「サロメ」や「エレクトラ」、ヤナーチェクの「イェヌーファ」などを思わせる。

 純情どころか、強情で気性の荒い女性ワリーの激しい愛憎の物語。スザンナ・フォン・デル・ブルクがまさしく体当たりの演技と歌で見事に演じている。ジュゼッペを歌うパウロ・フェッレイラも芯のある美声。この二人の屈折した愛憎がストーリーの根幹をなすが、とてもドラマティックで魂をえぐる音楽が続く。若い美男美女とはかけ離れた外見だが、十分にこのキャスティングには納得する。そのほか、シュトロミンガーのマルク・クーゲル、ゲルナーのベルント・ヴェレンティン、ワルターのスザンヌ・ランクバイン、アフラのクリスティーナ・コスマーノもとてもいい。

 アレクサンダー・ルンプの指揮するインスブルック・チロル交響楽団、ヨハンネス・ライトマイアーによる演出もとてもドラマティックでよかった。大いに感動してみた。

|

« パーヴォ・ヤルヴィ+ドイツ・カンマーフィルのブラームス3番・1番 | トップページ | 新国立「セビリアの理髪師」 とても満足 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
私は現在、高校3年生で看護大学を志望しています。先日、第一志望校の大学の合格発表があり不合格という結果でした。そこで、何がいけなかったのか、次の大学受験に向けて自分の小論文を見直していました。そこで先生の「小論文 これだけ!」を購入し拝読しました。その中で「小論文には【努力目標】は不必要」ということ知りました。ですが、私はこれまで「小論文の最後には、自分が今後どんなことを頑張りたいのかを書きなさい」と指導を受けてきました。その先生の指導が誤っていたということを受け、心底ショックを受けています。3週間後には受験を控えているのですが、このまま先生の指導に従って小論文を書き続けても良いのでしょうか。

投稿: 受験生 | 2016年12月 4日 (日) 15時46分

受験生 様
看護系の大学の場合、志望理由などが小論文問題として課されることがあります。そのような場合には努力目標を書くこともあります。「小論文これだけ!」のシリーズに看護系向けの参考書が2冊ありますので、参考にしてください。
不合格というのはショックだったと思います。が、多くの人が経験してきた道だと思います。もちろん、私も志望大学・志望学部に不合格でした。気を取り直して、次に受ける大学をじっくりと考えて、しっかりと勉強してください。

投稿: 樋口裕一 | 2016年12月11日 (日) 01時15分

お返事頂きありがとうございます。
次の大学に向け、精一杯の努力をしたいと思います。本当にありがとうございます。

投稿: 受験生 | 2016年12月15日 (木) 13時09分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/532807/64574211

この記事へのトラックバック一覧です: オペラ映像「マリア・ストゥアルダ」「メディア」「セビーリャの理髪師」「メフィストーフェレ」「ラ・ジョコンダ」「アドリアーナ・ルクヴルール」「アルルの女」「ラ・ワリー」:

« パーヴォ・ヤルヴィ+ドイツ・カンマーフィルのブラームス3番・1番 | トップページ | 新国立「セビリアの理髪師」 とても満足 »