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石田泰尚リサイタル フランクのソナタ、最高の名演!

 2016年12月20日、代々木上原にあるムジカーザで石田泰尚ヴァイオリン・リサイタルを聴いた。ピアノ伴奏は中島剛。前半にコープランドとシュトラウスのソナタ、後半にドビュッシーとフランクのソナタ。「オンリーワン」というタイトルのついたリサイタルだったが、この日取り上げられた作曲家は生涯に一つだけのヴァイオリンソナタしか残していないというのが、タイトルの意味だったようだ。なるほど、言われるまで気づかなかった。

 それにしても、石田さんのヴァイオリンは研ぎ澄まされていて繊細な音。ロマンティックな表現ではないのだが、音があまりに美しいのでそこに豊かなリリシズムが漂う。素晴らしいと思った。

 コープランドのソナタは初めて聴いた。なかなか面白い曲だと思ったが、演奏についてはどうこういえない。シュトラウスのソナタは、私の好きな曲の一つだ。この曲は、シュトラウスの20代の若書きの作品で、若々しい気負いと絢爛さがあらわれている。気負いが強すぎ、しかもこけおどしとも思えるような技術の誇示があるために、それをそのまま演奏すると崩壊しそうになる難しさを孕んでいるように思う。が、石田さんは、それを大人の音楽に改めるのではなく、真正面から気負いと絢爛さを受け止めて、それをそのまま音楽にしているように思えた。そのため、シュトラウスの未成熟な気負いやこけおどしがそのままあらわれていた。しかし、音の美しさと迫力のある絢爛さのおかげで、シュトラウスの欠点までもがとても魅力的な音楽になっていた。第一楽章と第三楽章に私は感動した。シュトラウス好きの私としては、等身大のシュトラウスに出会っている思いがした。

 ドビュッシーのソナタはもともと私は好きではない。その良さがわからないというべきか。そのためもあって、私はあまり石田さんの演奏に感銘を受けなかった。もう少しフランス的な優雅さやドビュッシーの不思議なユーモア感覚を強調してくれないと、私は楽しめないと思った。

 フランクのソナタは最高の名演。中島さんとの息もぴったり合って、実にドラマティックで繊細で情熱的なフランク。一部のスキもなく、一瞬たりとだれるところがなく、最初から最後まで息をつかせぬ迫力。しかも、まったく人工的な感じがなく、自然に音楽が盛り上がる。石田さんの音は、研ぎ澄まされた美音に加えて、もっと強くもっと情熱的な音色になっていく。第二楽章以降、私はずっと興奮していた。

 アンコールはクライスラー。「美しきロスマリン」以外は知らない曲だった。最後に「きよしこの夜」を無伴奏で。石田さんのクライスラーは本当に素晴らしい。高貴で清潔な精神がそのまま表れたような音楽。ちょっと下品な表現をしても、そこに上品な香りが漂っている。ほかの人にはできない技だと思った。

 なお、来年の1月16日、石田泰尚さんと山本裕康さん、諸田由里子さんのコンサートを仙川フィックスホールで多摩大学樋口ゼミ主催によって行う。現在、チケット販売中だ。詳細は以下をご覧いただきたい。

http://yuichi-higuchi.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-a8ca.html

 

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