「パリの生活」「美しきエレーヌ」「マノン」「イギリス女王エリザベス」の映像
この数週間で見たオペラ映像の感想を書く。

オッフェンバック 「パリの生活」2007年12月-2008年1月、リヨン歌劇場
実に楽しい映像。オッフェンバックの愉快で明るい音楽が次々と続く。セバスティアン・ルーラン指揮による演奏もとても良いし、歌手たちのレベルも非常に高い。容姿の面でも演技の面でも、そして衣装や背景の色彩面でも最高度に楽しめる。そして、なによりもローラン・ペリーの演出が驚異的。たくさんのダンサーが登場し、音楽に合わせて様々な動きがなされる。おしゃれでセンスがよく、最初から最後までにやにやしたくなり、時に吹き出したくなる。オペラの演出という枠を超えて、驚異のパフォーマンスというしかない。しかも、オッフェンバックにぴったり。明るくて軽くて楽しい。
これぞオッフェンバックのオペレッタの楽しみ。これだから、病みつきになる。もっとオッフェンバックを上演してくれないものか。しかし、このおしゃれな感覚を出すのはとても難しいだろう。とりわけ日本人には至難の業だろう。

オッフェンバック 「美しきエレーヌ」1997年 チューリヒ歌劇場
ニコラウス・アーノンクールの指揮、歌うのは、エレーヌのヴェッセリーナ・カサロヴァ、パリスのデオン・ファン・デル・ヴァルト、オレストのリリアーナ・ニキテアヌなど超一流の人たち。総力を挙げてのオペレッタだ。ちょっと演奏が立派すぎる気もしないでもないが、それはそれは見事な上演。ヘルムート・ローナーの演出もわかりやすい。オッフェンバックの音楽を存分に楽しめる。
ただ「地獄のオルフェウス」でも感じることだが、ギリシャ神話に題材をとって、そこに当時の風刺を含んだおふざけを加えた台本は、日本人には少々退屈だ。こんなに楽しい音楽なのに、もったいない。何とかできないものか。ストーリーを整理して、現代の日本人でも楽しめるように改変してもよいのではないか。そうしてもオッフェンバックを冒涜することにならないのではないか。それどころか、現代のフランス人にもそのほうが楽しめるのではないか。それを強く思わせる映像だった。
若きグルベローヴァがマノンを歌う映像。改めてグルベローヴァの美声に驚嘆した。驚異としかいいようがない。外見も本当にチャーミング。以前、文化会館でネトレプコの歌うこの役を見て感動したが、グルベローヴァも生で見たら、きっと同じように、あるいはそれ以上に感動しただろう。ただ、グルベローヴァが歌うと、あまり悪女に見えない。ネトレプコのほうが誘惑に負けやすい美女にぴったりだった。
ほかの歌手たちには少し怪しいフランス語が混じるが、グルベローヴァはフランス語の発音も完璧。デ・グリューを歌うのはフランシスコ・アライサ。きれいな声だが、この人の癖のある歌いまわしには今聴いても違和感が残る。
指揮はアダム・フィッシャー。ドラマティックでとてもいい。演出はジャン・ピエール・ポネル。わかりやすくて華やかで、しかも最終幕はなかなか泣かせる。

マスネ 「マノン」 2014年10月 リエージュ、ワロン王立歌劇場
1983年のウィーン国立歌劇場の映像以上に素晴らしい。マノンを歌うアニック・マシスはグルベローヴァに引けを取らないほどの美声と演技。フランス語の発音が実に美しい。容姿も十分にマノンに見える。デ・グリューのアレッサンドロ・リベラトーレは、時々フランス語らしからぬ発音になるが、輝かしくよく伸びる声。レスコーのピエール・ドワイエン、デ・グリュー伯爵のロジャー・ヨアキムのほか、脇役陣もそろっている。
パトリック・ダヴァンという指揮者は初めて聴いたような気がする。ドラマとして盛り上げて、とりわけ第三幕以降は圧巻。ステーファノ・マッツォニス・ディ・プララフェーラの演出もおもしろい。

ロッシーニ 「イギリス女王エリザベス」2015年 サッサリ、コムナーレ劇場
マルコ・スパダの演出。舞台の色遣いがとてもおもしろい。いかにもイタリア風。おしゃれでモダン。男はスーツを着てネクタイを締めている。現代の服装。ただ、演奏としてはあまりレベルが高いとは言いがたい。
「マリアリーザ・デ・カロリス」コンサート協会管弦楽団の演奏ということだが、これがどんな団体なのか私は知らない。少々貧弱な音。フェデリコ・フェッリの指揮も心もとない。歌手たちもまずまずといったところ。もしかしたら、容姿重視のキャスティングなのかもしれない。シルヴィア・ダッラ・ベネッタのエリザベッタ、サンドラ・パストラーナのマティルデ、ダヴィド・アレグレトのノルフォルク、いずれも健闘はしているが、感動するほどではない。そのなかで(レイチェステルを歌うアレッサンドロ・リベラトーレはとてもいい。
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