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最後の卒業式、そしてジョルダーナ監督の映画4本「輝ける青春」「ペッピーノの百歩」「13歳の夏に僕は生まれた」「狂った血の女」

 2017320日、多摩大学経営情報学部の卒業式(正確には、「卒業のつどい」と呼ばれている)が行われた。私が指導したゼミ生5名(そして、かつてのゼミ生1名)がめでたく卒業した。今回の卒業生は新居由佳梨ピアノリサイタル、海治陽一フルートリサイタル、戸田弥生・野原みどりデュオコンサート、石田泰尚・山本裕康・諸田由里子コンサートなどいくつものコンサートを企画運営し、成功に導いてくれた。3月で退職する私には最後の卒業式であるだけにいっそう感慨深い。ゼミ卒業生に花束をもらった。ありがたいことだ。

式の後のパーティで、私たちのゼミは今年度顕著な成果を上げたということで学部長賞をいただいた。これもありがたい。

1週間ほど前から少し時間的余裕ができて、DVDで映画を見ていた。ジョルダーナ監督の映画4本の感想を記す。

 

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「輝ける青春」 マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督 2003

 オペラ演出家の三浦安浩さんに薦められてみた。6時間を超すイタリア映画。ストーリーとしては、マルタン・デュ・ガールの「チボー家の人々」を思い出す。下敷きにしているのかもしれない。

中産階級の兄弟を中心にした物語。精神障害の女性と触れ合った経験を契機に二人は別の道を歩み始める。兄は真面目な優等生で医者になる。社会の理不尽に怒りつつも現実社会と折り合いをつけながら生きていく。弟は人生に疑問を持ち、社会の理不尽への怒りをうまくコントロールできずに苦しむ。映像があまりに美しい。そして、監督の演出力によるのだろうが、すべての役者の演技が素晴らしい。泣く表情、笑う表情、感情をコントロールできなくなる仕草がリアルで心に刺さる。とりわけ、弟(マッテオ)の自殺したあたりから、私は胸を打たれ、涙を流し、息をのみ、登場人物とともに人生を感じながら見入った。

いろいろなことが起こる。世代にまたがって時代は動く。人はそれに翻弄されながら時代を作っていく。そして、世代が変わり季節が変わる。人生は悲しいことだらけ。しかし、人生のすべてが美しい。それをしみじみと感じる。

 

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「ペッピーノの百歩」 マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督 2000

「輝ける青春」があまりに素晴らしかったので、同じジョルダーナ監督の映画を見てみた。これもとてもいい。シチリアのマフィアの一家に生まれたジュゼッペ(愛称がペッピーノ)が、マフィアの抗争で殺されたのを機会に反マフィアの共産党員になって活動し殺されるまでの物語。1970年代の実話だというが、イタリア国内でも有名な人物ではないらしい。「輝ける青春」の兄を演じたルイジ・ロ・カーショの主演。英雄視するのでなく、悩み、傷つき、青春の行き過ぎもあった青年を等身大に描く。演出も大げさではなく、抑制的。映像がとても美しい。マフィアを単に悪者として描くのでなく、それなりの言い分のある人間的存在として描いているところも素晴らしい。

 

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13歳の夏に僕は生まれた」 マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督 2005

 これも傑作。中産階級の何不自由なく育った13歳の少年サンドロは父やその友人とギリシャの海でヨット・クルーズをしているとき、海に投げ出され、九死に一生を得る。その時、助けてくれたのが不法移民の乗る密航船であり、その船で力を貸してくれたのがルーマニア人の若者ラドゥと少女アリーナだった。それを機会にサンドロは別の世界を知り、きれいごとではいかない社会を垣間見る。サンドロの両親は息子を助けてもらったお礼に二人を手助けしようとするが、裏切られる。サンドロはアリーナから電話をもらって愛に行くが、そこでみたのは娼婦として暮らしているらしいアリーナだった。・・・・

 恵まれた少年が理不尽な社会に痛めつけられる人間を知って目覚めていく・・・というのは「輝ける青春」とも「ペッピーノの百歩」とも共通する。純粋な少年の目から見た社会のゆがみが鮮烈に描かれる。映像が実に美しい。誰も必死に生きようとするし、誰もがそれなりに誠実なのだが、社会のゆがみの中ではどうにもならない。

 

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「狂った血の女」 マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督 2008

 1930年代に活躍した実在のスター俳優オズワルド・ヴァレンティ(ルカ・ジンガレッティ)とその愛人であり人気女優でもあるルイザ・フェリーダ(モニカ・ベルッチ)がファシスト政権に協力し、パルチザンに処刑されるまでを描く。第二次大戦前後のイタリアの混乱の中、権力に巻き込まれながら、愛とエロスとドラッグにまみれながらも、必死に生きるが、ファシスト政権下のねじれた状況の中ではどうにもならない。「輝ける青春」のマッテオ役のアレッシオ・ポーニ演じる映画監督ゴルフィエロ(ルキノ・ヴィスコンティをモデルにしているが、架空の人物らしい)がとても魅力的。

 B級映画風のタイトルだが、むしろ本格的な現代史映画だ。時代に翻弄される人間の生きざまとしてとても刺激的でおもしろい。ルイザを演じるモニカ・ベルッチは肉体派女優として有名だが、確かに魅力的。ただ、主役のヴァレンティを演じるルカ・ジンガレッティは演技は見事ながらスター俳優らしいオーラを感じない。演出上の意図があるのか、それとも実在のヴァレンティがこのような雰囲気の人物だったのか。これについては納得できなかった。

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