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METライブビューイング「ルサルカ」 まるでワーグナーのようにドラマティック

東銀座の東劇でMETライブビューイング「ルサルカ」をみた。あっと驚く演奏と演出だった。私の考えている「ルサルカ」とかなり異なっていたので初めは戸惑ったが、最終的には納得し、大いに感動した。

まずマーク・エルダーの指揮によるオーケストラの音に驚いた。私のこれまで聴いてきたメルヘンっぽい音楽ではなく、濃厚なロマンティシズムを感じさせる。インタビューでエルダー自身が語っていたが、まさにワーグナーの影響の強さを感じさせる音楽。ドラマティックで鋭利でもある。しかも、メアリー・ジマーマンによって進んでいくストーリーは、愛に一途ではあるが、愛する人を死へと引きずり込む魔性の女の物語でもある。私の「ルサルカ」のイメージが大きく転換させられた。

ルサルカを歌うのはクリスティーヌ・オポライス。数年前にメトロポリタン歌劇場のライブビューオングで見たルネ・フレミングの歌うのとはまったく異なって、激しさ、暗さを表に出したドラマティックな歌唱。まるでサロメかクンドリのような雰囲気。声、そして声の表現力に加えて演技も見事、容姿もあまりに美しい。王子のブランドン・ジョバノビッチも見事な声。オポライスに匹敵する。

イェジババのジェイミー・バートンもヴォドニクのエリック・オーウェンズもエネルギッシュで凄みを感じさせる歌唱。そしてなにより外国の王女カタリーナ・ダライマンがとてつもない声を聴かせてくれる。現代考えられる最高の布陣だろう。妖精たちを含めて、登場する歌手全員が見事に歌い、見事に演じる。そして、ダンサーなどの黙役も最高のパフォーマンス。森の中も城の中も舞台装置も存在感があり、色彩的にも芸術そのもの。

第三幕は感動に震えた。ルサルカは王子を死へといざなう。まるでトリスタンとイゾルデ。指揮のエルダーも演出のジマーマンも間違いなくそれを意識していただろう。死の中で結実する愛を歌い上げる。しかも、それは幸せな未来を歌うのではなく、暗い情念、現実の生からあふれ出る激しい生を含んでいる。ルサルカと王子の歌唱は素晴らしかった。

なるほど、このオペラをそう捉えることもできる。このような解釈を、贅沢な舞台装置を使って楽しいパフォーマンスにしてしまう演出家、演奏家の力量、そしてメトロポリタン歌劇場の実力に感服した。

「ルサルカ」はかなり好きなオペラだ。30年以上前、ルチア・ポップの歌うアリア集のCDで「月に寄せる歌」を知って、その後、全曲盤CDも何組か購入、プラハ国立歌劇場(だったかな?)の日本公演もみたし、新国立劇場での公演もみた。が、モーツァルトの「魔笛」やヤナーチェクの「利口な女狐の物語」をみるときと同じような「わからなさ」を常に感じてきた。私の頭の中でストーリーがうまく整理できない。それぞれの人物が何を狙っているのか掴めない。場面のいくつかに整合性がないように思える。ルサルカの歌う「月に寄せる歌」と父ヴォドニクが第二幕歌うアリアのメロディがあまりに似ているのも不思議な気がする。不思議なところだらけのオペラだった。

 今回、ライブビューイングをみて、ヒントをもらった気がする。ただまだよくわからない。もう一度、対訳をよく読んで、私なりに整理してみたい。

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