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松尾俊介 ギターによる超名曲リサイタル 繊細な素晴らしい音楽と軽妙なトーク

2017310日、中野区の西武新宿線沿線にある野方区民ホールで松尾俊介ギター・リサイタルを聴いた。野方WISフライデー・コンサートの一環。超名曲選とのことで、有名曲のオンパレード。素晴らしかったし、とても楽しかった。

 私はギターをほとんど聴かない。縁あって、多摩大学樋口ゼミのコンサート活動でギターの演奏をお願いすることになって松尾さんを知った。同時に、ギターの魅力も知った。その素晴らしい技巧と繊細で知的な音楽づくりに魅せられて、それ以来、樋口ゼミで合計4回、演奏をお願いした。松尾さんのギター・リサイタルにも何度か出かけた。

 最初の曲はダウランドの「涙のパヴァーヌ」。この出だしから、繊細な松尾さんのギターの世界に引き込まれた。松尾さんはトークの愉快な若い関西人なのだが、奏でる音楽は実に繊細で知的。奇跡の指とでもいいたくなる。人生そのものを感じさせるようなしなやかでやさしくて美しい音が出てくる。アルベニスの「アストゥリアス」、タレガの「アルハンブラの想い出」、バッハの「シャコンヌ」、メルツの「ハンガリー風幻想曲作品65-1」。超絶技巧も、ひけらかすのでなく内面の思いが外に開放されるのを感じる。強い音、激しい音も我を忘れるのでなく、知的に内面を通した音楽になっている。

 後半は武満徹編曲による「早春譜」から始まった。松尾さんは武満にぴったりだと改めて思った。俗っぽい曲も武満編曲になると独特の陰りとやさしさと細やかさをもつ。それを松尾さんのギターは完全に再現してくれる。

 ポンセの「スケルツィーノ・メヒカーノ」、ディアンスの「サウダージ 第3番、第2番」やジョビン作曲ディアンス編曲の「フェルシダージ」も素晴らしかったが、やはり私は最後の2曲ビジョルド作曲ディアンス編曲の「エル・チョクロ」とディアンスの「タンゴ・アン・スカイ」に大いに感動した。松尾さんの「タンゴ・アン・スカイ」を聴くのは確か3度目だが本当に素晴らしい。心の思いを音楽にしているのがよくわかる。

 アンコールの最後にこれぞ定番の「禁じられた遊び」。聴衆には高齢の方もかなりおられた(若い方も多かった。うれしいことだ!)、この世代のほとんどはこの曲でギターの魅力を知ったはずだ。ただ、残念ながら、アンコールの途中から、おそらく誰かの補聴器が耳から外れのだろう、私のすぐ後ろで電子音が響き始めて、私としてはかなり気になった。

 とはいえ、トークもおもしろく、笑いが起こり、音楽的にも素晴らしいコンサートだった。

 私は1970年の3月末から8月までの5か月間ほど、西武新宿線沿線の沼袋近くの寮に住んでいた。父の勤め先に関係のある寮だったが、共同生活になじめずにすぐにそこを出て一人暮らしを始めたのだった。野方は沼袋の隣駅。もちろん45年前とは何もかも違っている。が、昔と似た雰囲気は残っている。久しぶりに西武新宿線の雰囲気を味わった。懐かしい思いを抱きながら自宅に帰った。

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