最近見たオペラ映像「アルミーダ」「恋愛禁制」「後宮からの誘拐」
年度末になり、大学の授業も終わり、様々の行事もほぼ終わって、やっと時間的余裕ができた。いくつかオペラ映像をみたので感想を記す。
ロッシーニ 「アルミーダ」2015年11月 フラーンデレン歌劇場
先ごろ、アルベルト・ゼッダが亡くなった。つい昨年の12月に東京で『テーティとペレーオの結婚』を指揮したばかり。残念ながら、この日の演奏は聴かなかったが、NHKの放映をみた。89歳にしては驚くほど元気に見える。
そのゼッダが一昨年指揮したロッシーニの初期のオペラ。METのルネ・フレミングがタイトルロールを歌った映像を見たことがある。METのものに匹敵するほど素晴らしい。
アルミーダを歌うカルメン・ロメウがまさしく体当たりの歌と演技。第一幕では少し不安定に聞こえたが、それ以降は尻上がりによくなって美しく妖艶で恐ろしいアルミーダを歌う。最終幕は息をのむほどの迫力。リナルドを歌うエネア・スカラも伸びのある声と見事な容姿。
ジェルナンドとウバルドの二役を歌うロバート・マクファーソンの声が少しかすれ気味だが、全体的にはきれいな声。ゴッフレードとカルロを歌うダリオ・シュムンク、イドラオテとアスタロッテと歌うレオナルド・ベルナードもみごと。
そして、なによりゼッタの指揮にメリハリがあり、ドラマティックでとてもいい。演出はマリアーメ・クレメント。戦場の英雄を競技場の英雄に置き換えての演出であって、古代の魔女の話ではなくなっている。競技場の英雄が色香に迷って練習を怠っていたが、また頑張り始めた・・・といった雰囲気の物語になっていて、ちょっと拍子抜け。
ワーグナーの最初のオペラ「恋愛禁制」をはじめてみたのは、20年近く前、東京オペラプロデュースによる上演だったと思う。なかなかおもしろいと思った記憶がある。場面はシチリア。恋愛を禁止した権力者をみんなで痛めつける話。
何も知らずに聞いたら、ワーグナーの影響を受けてドニゼッティがドイツ語で作った、あまり成功しなかったオペラ?・・・とでも思いそう。ちょっとワーグナーっぽい。ライトモティーフらしい手法も使われる。ワーグナーのオペラのどこかで聴いた記憶のあるメロディや和音も時々あらわれる。ドニゼッティの名作といえないオペラと同じくらいに楽しめる。
イザベラのマヌエラ・ウール、フリードリヒのクリストファー・マルトマン、ルチオのペーター・ロダール、クラウディオのイルカー・アルジャユィレクなど、歌手はそろっている。歌だけ聴くと少々不満かもしれないが、みんな容姿がいいし、演技もうまいので、映像で見ると満足できる。
演出はカスパー・ホルテン。喜劇性を表に出し、色鮮やかでにぎやかな舞台になっている。カーニバルの場面では、わいわいがやがやととても楽しい。わかりやすくて、楽しくて、人物をうまく描いている。ホルテンの演出は、コペンハーゲンの「リング」をはじめいくつか見た記憶があるが、いずれも素晴らしかった。とてもいい演出家だと思う。
指揮はアイヴァー・ボルトン。ザルツブルク音楽祭でも何度かこの人の演奏を聴いた。地味な雰囲気だが、しっかりしたドラマティックな音楽を作る指揮者だ。とても楽しく聴けた。
モーツァルト 「後宮からの誘拐」1980年 バイエルン国立歌劇場
昨年、グルベローヴァ来日の際、まだ見たことのないグルベローヴァのDVDを探している際にこのオペラを見つけて購入していたが、そのままになっていた。指揮はベーム。ベルモンテのフランシスコ・アライサ、オスミンのマルッティ・タルヴェラ、ブロンデのレリ・グリストなど、70年代、80年代のオペラに親しんだ人間には実に懐かしい顔ぶれ。
ただ、今聴くと、アライサとグリストはちょっと不安定。ペドリッロ役のノルベルト・オルトも弱い。しかし、タルヴェラは堂々たる声でさすが。やはり圧倒的なのは、グルベローヴァ。若々しく張りのある声で、コロラトゥーラに輝きがある。一人だけ図抜けている。
演出はアウグスト・エファーディング。現代からすると、あまりに何事もない。ベームの指揮については、冒頭部分は軽やかでしなやかで素晴らしいが、後の法で少しもたついている部分を感じた。とはいえ、オーケストラの演奏は全体的にとても満足。
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