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METライブビューイング「エフゲニー・オネーギン」最後には大感動

 東劇でMETライブビューイング「エフゲニー・オネーギン」を みた。第三幕は涙を流した。

 このオペラが私は中学生のころから大好きだ。その後、チャイコフスキーという作曲家には一定の距離を置くようになったが、このオペラについては今も愛せずにはいられない。多くの人が「オネーギンがあまりに傲慢」「オネーギンよりもタチアナに惹かれる」という中で、私はオネーギンという人物が大好きだ。初めてオペラを知ったころ、中学生ながら岩波文庫だったか原作を読んだ。韻文が多くて読むのに苦労したのを覚えている。が、生意気で多感な中学生だった私は、「ふさぎの虫」(確か、このような訳語が使われていたと思う)に襲われる世をすねたオネーギンをカッコイイと思った。そのオネーギンに惹かれ、最後にはねつけるタチアナを可憐だと思った。オネーギンの分身としての素直な心の持ち主であるレンスキーにも共感した。オペラの最初の30分の陰鬱な田舎の雰囲気でオペラの世界に没入した。それから50年以上たつが、いまだに同じ思いでいる。

 そして、今回のライブビューイング。ホヴォロストフスキーが体調不良とのことでペーター・マッテイがオネーギンを歌った。マッテイのオネーギンは、前半は傲慢で嫌味な部分を強調し、後半は真摯さを示す。うまい演技、最高の声。これまで確か2回ほど、この人のオネーギンの映像を見た記憶があるが、現代最高のオネーギンだと思う。ネトレプトのタチアナももちろん素晴らしい。

ただ、今回の演奏や演出も含めて、ネトレプコのタチアナは中学生のころから私が愛してやまない「エフゲニー・オネーギン」とは少し違う。私が大好きなのは、チャイコフスキーの内向的でメランコリックで地味な部分が現れたこのオペラだ。つまり、タチアナはもっと暗く内向的でうちに秘めていてほしい。演奏ももっとけだるく、陰鬱で切なく、そして田舎風であってほしい。ロビン・ティチアーティの指揮はあまりにヴィヴィッドで鮮やか、ネトレプコが歌うとどうしても華麗になる。

とはいえ、第三幕は素晴らしい。劇的な場面になると、ティチアーティの指揮が実にさえる。幕切れは切なく悲しく悲劇的。マッテイもネトレプコも実に素晴らしい。

歌手陣の中で目だったのはグレーミン公爵を歌ったシュテファン・コツァン。若手だが、見事な低音。レンスキーを歌ったアレクセイ・ドルゴフは健闘していたが、主役二人に比べると力不足、魅力不足を感じた。オリガを歌ったエレーナ・マクスモワはとても魅力的な若手歌手だが、前半、少し音程が不安定だった。

さすがメトロポリタン歌劇場の公演だけあって、最後には満足させ感動させてくれる。次回は「ばらの騎士」。今から楽しみでならない。

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