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ANCORA主催「オテロ」 簡素ながら工夫を凝らされた舞台

千葉市の新検見川駅から少し歩いたところにある風の丘HALLで「オテロ」をみた。主催はANCORA。風の丘HALLは84席のオペラ専門の小劇場。私はこの劇場で行われる公演のレベルの高さゆえにひいきにしている。今回は、とりわけ私の尊敬する三浦安浩さんの演出。見ないわけにはいかない。

 第1幕前半は多くの歌手の音程が不安定だったが、徐々に安定してきた。オテロを歌うのは上本訓久、デズデモーナは斉藤紀子。三浦演出のオペラ常連でこれまでも素晴らしい歌唱を聴かせてくれた二人だ。美声の上に張りがあってとてもいい。イヤーゴは大野浩司。太い声で演技も見事。そのほか、私はビアンカを歌った鈴木麻由の声と容姿にも大いに惹かれた。そのほかのメンバーもとてもレベルが高い。

 もう一人、ロドヴィーゴの松山いくおの演技にも目を見張った。前回、風の丘HALLで上演された「マノン」でも、あまりに達者な演技が目立っていたが、今回もまた素晴らしかった。この人の存在なしには今回の三浦さんの演出は成り立たなかっただろう。

 シェークスピアに基づく日本語のセリフとイタリア語によるヴェルディのオペラから成る。ピアノは村上尊志。日本語字幕はなし。

登場人物は扮装せず、男性はスーツ姿。オテロに好意を抱く人々は赤のシャツ、敵意を抱く人々は黒のシャツを着ている。登場人物たちは舞台にとどまらず、客席に自由に入ってくる。いや、初めから舞台と客席が分けられていない。松山さんを中心とした人物の日本語によるセリフの部分によってイマジネーションがかきたてられて、観客はオペラの世界の中に入りこむという仕掛けになっている。日本語字幕はつかず、細かいところは何が語られているかわからないが、日本語の台詞の場面によって、大まかには理解できるように組み立てられている。簡素ながら工夫のこらされた舞台だ。

 それにしても、シェークスピアの台詞の見事なこと。改めてほれぼれとする。お金をかけられないという状況を逆手にとって新たな試みをし、しかもシェークスピアの台詞まで再発見させてくれるところはさすが三浦さん。

 ただ、私は前から2列目で見たが、左右から音楽が聞こえて、音が1つにまとまらずに困った。もう少し後方の席で聴くほうが私の好みだった。

 ともあれ、この劇場で行われるオペラ公演の質の高さを改めて認識した。もっともっとこのようなレベルの高いオペラ公演を行ってほしい。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

樋口先生、昨日はご来場ありがとうございました。苦労して作り上げた作品なので先生のお言葉の一つ一つがありがたいです。昨日は仲間たちの演奏にも感動しましたが、何より先生を始めとしたお客様が3時間半近くの間本当に集中してご覧下さったことに感激しました。実はこのプロダクションが2002年からスタートした自分の演出、第100作です。敢えて自ら簡素の限界に挑戦しました。これからも挑戦を続けて参ります。よろしくお願い致します。

投稿: 三浦安浩 | 2017年6月26日 (月) 09時23分

あと、一つ訂正をお願いしたい点があります。デズデモナを歌った斉藤紀子は風の丘ではマノンではなくウェルテルのシャルロッテを歌いました。上本も斉藤も僕の作品では常連でいつも全身全霊をかけて役に挑戦してくれます。因みに今回は出演者全員がオテロ初挑戦でした。

投稿: 三浦安浩 | 2017年6月26日 (月) 09時27分

三浦安浩 様
昨日はありがとうございました。意欲的な上演、大変楽しませていただきました。
そして、コメントについてもありがとうございます。
これまでの配役を取り違えていたとのご指摘、大変失礼いたしました。
早速本文を訂正させていただきました。
新たな試みを楽しみにしております。出演者の皆様によろしくお伝えください。

投稿: 樋口裕一 | 2017年6月26日 (月) 09時43分

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