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 ヤング+読響+ネマニャのブルッフに感動

 2017年6月17日、東京芸術劇場で読売日本交響楽団第198回マチネ―シリーズを聴いた。指揮はシモーネ・ヤング、ヴァイオリンはネマニャ・ラドゥロヴィチ。

 最初の曲は「さまよえるオランダ人」序曲。冒頭から実にしなやかな音。そして、フォルテになるとずしんと体中に響くような音。緩急をつけ、時にはゆっくりすぎるほどゆっくり。弦を歌わせ、絶妙に響きをコントロールして微妙な音色を作りだしながら音楽を展開していく。これほどテンポを動かしているのに、まったく作為性がなく、自然に音楽が広がっていく。素晴らしいと思った。

 私がヤングの実演に接したのは「ナクソス島のアリアドネ」二期会公演だけなので、CDはかなりの枚数持っているが、指揮姿を目の前で見るのはこれが初めてだ。きわめてわかりやすい振り方だと思う。なるほど、このようにするとこんな音が出るのかと納得のできる振り方。腕の振りもしなやかでかつ強靭だ。

 とはいえ、今日の目的はヤングではなく、ヴァイオリンのネマニャ。私は発足当時のファンクラブの会長だった。

いよいよネマニャ登場。黒ずくめで、長い髪を片方に長く垂らしている。もしかして、化粧をしている? が、この人は何をしてもいい。そんなヴァイオリニストだと思う。

ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番が始まった。オーケストラは相変わらず素晴らしい音。そして、そこにネマニャの研ぎ澄まされた美しい音が加わる。音程がビシッと決まったクリアな音。オーケストラの作りだす背景の中にスーッと一本の鋭い線を描き出される。だが、怜悧な音というのではなく、心の律動を音にしたかのよう。スケールが大きく自然で美しい。いつものように指揮者のヤングやコンサートマストレスの日下さんと会いコンタクトを取って目による対話をしながら音楽を進めていく。

私がネマニャのこの曲の演奏を聴くのは二度目だ。前回は2014年4月、大阪のフェスティバルホールで大フィルの伴奏だった。前回もネマニャの音は素晴らしかったが、今回はいっそう音が研ぎ澄まされ、ロマンティックな魂の躍動を描き出す。スケールが大きい。しかも、今回の指揮はシモーネ・ヤング。基盤がしっかりしているので、ネマニャが大きな世界の中で躍動しても、枠組みは揺らがない。

私は2007年にフランスのナントでネマニャのヴァイオリンに触れて虜になったが、その時に比べてネマニャの音楽は間違いなく成熟している。以前にようにヴァイオリンという楽器を使って魂の舞踏を踊るのではない。もっと落ち着き、研ぎ澄まされた音で大きな絵を観客の前で描いていく。第二楽章の繊細な音楽も第三楽章のダイナミックで華麗な音楽も躍動しながら揺るがない。本当に素晴らしい。

大拍手の中でアンコールが始まった。パガニーニのカプリースをつなぎ合わせた無伴奏曲。おそらく2014年に大阪で聴いたものと同じヴァージョンだろう。

これはブルッフ以上に凄まじかった。緩急を自在につけ、名人技を披露し、激しいところは激しく速いところ速く。しかし、音がぴしりと決まっているので、下品にならない。まさしくカプリース(気まぐれ)。途中、弦がネマニャの髪に引っかかって少しだけ音が途切れた。オーケストラとのプログラム曲の最中にこんなことが起こったら大ごとだが、アンコールでカプリースをネマニャが演奏しているのだから、これもネマニャの魅力の一つだ。笑いが起こった。なんという音楽の快楽、なんという躍動。ダイナミックに音が上下し、魂がゆり動かされる。カプリースというのは実は心の躍動の音楽なのだと納得する演奏だ。

10年間ネマニャを追いかけてきて、その順調な成熟を頼もしく思った。大人の音楽になっている。が、決してかつての躍動の美学を失っていない。ますます将来が楽しみだ。

後半はブラームスの交響曲第2番。大いに期待していたが、実は少し失望した。どういうわけだろう。ワーグナーやブルッフの場合と音楽の作りはそれほど変わらないと思うのだが、緩急をつけ、時にゆっくりと歌いだし、時に大きくうねりだすと、なぜか形が崩れてしまう。まるでブルックナーのようになってしまって、ブラームスの魅力が半減する。

第2楽章と第3楽章では私はかなり退屈した。繊細であるべき部分が不自然に響き、音楽が空回りしている印象を受けた。そういえば、私はハンブルク・フィルと録音したブラームスの交響曲全集もあまりおもしろいと思わなかった。もしかしたら、ヤングはブラームスが苦手なのかもしれない。少なくとも、私の好きなブラームスにはならないのかもしれない。とはいえ、第4楽章ではさすがにロマンティックに盛り上がった。

ブラームスには少々失望したとはいえ、前半は素晴らしい演奏だった。大満足。

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