オペラ映像「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」「ペレアスとメリザンド」「真珠とり」「メリー・ウィドー(フランス語版)」
オペラ映像を何本か見たので、感想を書く。
「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」 2015年コヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラ・ハウス
アントニオ・パッパーノの指揮、ダミアーノ・ミキエレット演出の「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」。主演はともにアレクサンドルス・アントネンコ。性格の異なる二つの役をアントネンコは実にうまく歌っている。声も素晴らしい。サントゥッツはエヴァ=マリア・ウェストブローク。これも見事。特筆するべきはネッダのカルメン・ジャンナッタシオ。小柄な女性だが、実に魅力的で声も強靭。まだかなり若いと思うが、これからが楽しみだ。トニオのディミートリー・プラタニアスもうまく演じている。
演出によって二つのオペラを関連付けている。「道化師」のネッダとシルヴィオの出会いが「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲の部分で黙役で示される。「道化師」の間奏曲の部分では、トゥリドゥの死後、心が癒されないまま道化芝居を見物に来たサントゥッツァとルチアが登場する。なるほど!
パッパーノの指揮は大変雄弁。ドラマティックで美しい。こんなに雄弁なのにまったく不自然さはない。すごい指揮者だと思った。この映像について、私はこれまで知らなかったが、名演奏、名演出だと思った。
ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」2012年 パリ、バスティーユ歌劇場
ロバート・ウィルソンの演出がおもしろい。具体物はほとんどなく、登場人物の動きも具体性がない。まるで能の舞台をみているよう。象徴的な静かな動きから成る。歌手もそろっている。ペレアスのステファヌ・ドゥグーとメリザンドのエレナ・ツァラゴワ、ゴローのヴァンサン・ル・テクシエ、ジュヌヴィエーヴのアンネ・ゾフィー・フォン・オッターはいずれも美しいフランス語、きれいな抑制した声が見事。
ただ、実は私はこの音楽には30分以上耐えられなかった。私の購入したDVDに欠陥があるのか、それともほかの事情があるのか、音量が上がると音が割れてジャリジャリというノイズが混じる。機械の故障かと思って別の再生機でかけてみたが、結果は同じだった。別のDVDではそのような症状は出ないので、少なくともこのDVDに問題があるようだ。
そんなわけで、フィリップ・ジョルダンの指揮については、何とも言えない。
ちょっとイタリア語なまりのフランス語が気になるが、なかなか楽しめた。日本でも大人気のディミトリ・コルチャクがナディールを歌って、とても美しい声を聴かせてくれる。レイラを歌うのはパトリツィア・チオーフィ。歌に文句はないが、あまりにエキセントリックな雰囲気。演技でこのようにしているのだろうか。初めのうちはこれでよいにしても、後半ではもっと女性的な動きを見せてほしいのだが、ずっとエキセントリックなままだ。せっかくの美貌なのに、これでは私にはなぜナディールとズルガがこれほどに恋い焦がれるのか理解に苦しんでしまう。ダリオ・ソラーリのズルガとロベルト・タリアヴィーニにヌーラバドもよい声だが、ちょっとイタリア語なまりが強すぎる気がした。
指揮はガブリエーレ・フェッロ、演出はファビオ・スパルヴォリ。ともに活気があって、私としてはとてもおもしろかった。
レハール オペレッタ「メリー・ウィドウ」(フランス語版)2007年 リヨン歌劇場
このオペレッタはそもそもパリが舞台。そのためもあって、フランス語で歌われても十分に説得力はある。このオペレッタが好きな人はかなり違和感を覚えるかもしれないが、私のようにレハールに特になじんでいない人間には、まったく違和感なく、まるでフランスのオペレッタのように楽しめた。フランス語も実に自然。
未亡人を歌うヴェロニク・ジャンスがやはり素晴らしい。風格があり、声に品格がある。 ダニロのイヴァン・ラドロウも端正な顔立ちと歌いぶり。ナディアを歌うマガリ・レジェがコケティッシュでかわいらしい。小規模なオペレッタとしては全員が容姿、声、演技ともに申し分ない。
演出はマーシャ・マケイエフ。ローラン・プティの演出と同じように、おしゃれでユーモラスで動きがあるので、見ていて飽きない。さすが、フランスの劇場での演出はほかと違って軽やかで大人の遊びにあふれていて、存分に楽しめる。ジェラルド・コースタンの指揮もテキパキしていて、しかも情緒があり、とても楽しめる。満足の一枚だった。
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