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トルナトーレの映画「教授と呼ばれた男」「明日を夢見て」「シチリア!シチリア!」「天文学者の恋文」

 忙しさからやっと解放された。数日前から少しずつ時間が作れるようになり、今日はかなりのんびりできた。明後日にはまた札幌に行き、その後もあれこれと仕事はあるが、これまでのように時間に追われることはなくなりそう。

 この数日間にみた映画DVDの感想を書く。トルナトーレ監督の映画を4本みた。

 

「教授と呼ばれた男」 1986年

 トルナトーレの処女作。姉をからかった男を衝動的に殺して刑務所に入り、そこで頭角を現してマフィアのトップに上り詰めた男(ベン・ギャザラ)の死までを描く。後のトルナトーレの映画からは考えられないような暴力的な場面が続出する。マフィアに支配されるイタリア世界の状況がよくわかる。知的で残酷な男の人間性を見事に描いて、最後まで飽きないし、見ている者に不思議な感情移入をさせてしまうところはさすが。処女作とは思えないほどの演出力に舌を巻く。

 

「明日を夢見て」 1995年

 映画の新人発掘だと称してシチリアを回り、市民を募ってお金を取って紹介フィルムを取る詐欺師(セルジオ・カステリット)を中心に描く。カメラの前では誰にも言えない真実を語る市民の描写が素晴らしい。女優を夢見て男を追いかけ、その愛人になる孤児役のティツィアーナ・ロダトがとても初々しい。小悪党を狂言回しにしたロードムービーというよくあるタイプの映画なのだが、庶民への愛と人物描写、シチリアの風景がみごと。かつてのデ・シーカを思わせる作風。とても良い映画だと思う。

 

「シチリア!シチリア!」 2009年

 原題は「バーリア」。シチリアのバーリアという町で暮らすペッピーノ(フランチェスコ・シャンナ)の一代記。貧しい家に生まれ、共産党員になり、議員になり、家族を養う。1930年代から戦争が始まり、戦争が終わり、豊かになっていく時代を背景にしている。起承転結のある物語というよりも、様々なエピソードを並べ、シチリアの町の人間模様、家族の葛藤、ペッピーノの成長、時代の変遷を描いていく。実にリアリティがあり、生き生きとしている、作りごとではない、人間が生きてきた歴史、そして世代から世代へと受け継がれていく精神が感じられる。愛があり、死があり、いたずらがあり、哀しみがある。これが人生だと強く感じる。映像の美しさ、あらゆる俳優の魅力的な動き、そして何よりもトルナトーレ監督の演出手腕を強く感じる。ただちょっとわかりにくいところがあった。「卵が割れる」エピソードが出てくるが、これって「死産」を意味するのだろうか。

 

「ある天文学者の恋文」2016年

 トルナトーレの最新作。昨年、劇場でみようと思っていたが、行く前に終わってしまったのでDVDでみた。天文学を学ぶ女子学生(オアルガ・キュリレンコ)は天文学の権威である教授(ジェレミー・アイアンズ)と恋に落ちる。だが、教授は病死。ところが、死後も教授からメールが届き、プレゼントが届く。考えられないような設定だが、それはそれでとても納得できる。教授は死後も女子大生を過去の重みから解放させようとする。年の差のある男女の恋を美しく描いている。確かに考えてみれば、私たちは星々という数億光年前の光をみている。星の中にはずっと昔に死んでしまったものも混じっている。天空という無限の世界を前にしての生と死というテーマが男女の恋という形で描かれるというか。素晴らしい映画だと思った。

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