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2冊の本「≪ニーベルングの指環≫教養講座」(山崎太郎)と「ひとりヴァイオリンをめぐるフーガ」(パパヴラミ)、そして拙著のこと

 久しぶりに原稿の締め切りに追われていない。お盆の間、本を読んだり、映画のDVDを見たりして過ごした。

 私は読んだ本についての感想は基本的にはこのブログに書かないことにしている。時間が取れなくて、実はたいして読んでいないという事情もあるし、私も本を書くのが商売なので、手の内を明かしたくないという事情もある。が、この数日に読んだ2冊の音楽関係の本については、この原則を破ってもいいだろうと思った。簡単に感想を書く。

 

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山崎太郎「≪ニーベルングの指環」教養講座」

 ワーグナー研究家の山崎氏による入門書だが、入門書のふりをしつつ、きわめて専門的なことまで踏み込んだ名著だと思う。

私は高校生のころからワーグナーの「指環」に親しんできたが、レコードを聴いたり映像を見たり、実演を見たりしてして、疑問に思うことがいくつもあった。「え、なぜ突然、こんなセリフが出てくる?」「え、この登場人物はなぜそんなことを知ってるんだ? 一体いつ知る時間があったんだ?」「つまり、このセリフはどういうこと?」「え? このセリフ、前の部分と矛盾するんじゃないの?」「おいおい、この登場人物、今一体何歳なんだ?」「前の場面から一体、何年たっているんだ? 計算が合わないではないか」「きっと、ワーグナーが台本を書くときに、つい勘違いしてこんなことを書いてしまったんだろう」などなど。

山崎は愚直なまでに台本をそのままに受け取って、そこに整合性を見出し、そこに込められた意味を解き明かしていく。その手際が見事。生真面目な研究書でも、教科書的な入門書でもなく、知的冒険に満ちた独自の解説書。しかも、あれこれの文章作成上の仕掛けがある。読み始めると、おもしろくてやめられなくなる。目を見開かれた指摘がいくつもあった。バルザックやドストエフスキーとの関係の指摘にも深く納得した。

これから先、ワーグナーに触れるたびにこの本を読み返すことになりそうだ。

 

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テディ・パパヴラミ(山内由紀子訳) 「ひとりヴァイオリンをめぐるフーガ」 

 パパヴラミは私の大好きなヴァイオリニストの一人だ。2011年のナントのラ・フォル・ジュルネで初めて接し、様々な感情の入り混じった独特の音色と情熱的でありながらもきわめて知的な弾きっぷりに圧倒された。2011年と今年(2017年)のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンでも来日している。そのパパヴラミが自伝を出していると聞いて読んでみた。この本のタイトルを音楽愛好者向けにいいかえれば、「独奏ヴァイオリンのためのフーガ」ということになる。

 単にヴァイオリニストの自伝というレベルを超えておもしろい。1971年に生まれ、鎖国時代のアルバニアで少年時代を過ごし、神童として知られるようになり、12歳の時、奨学金を得てフランスに留学する。しかし、実はパパヴラミの家系は独裁者ホッジャに批判的だった。パパヴラミ自身もすでにアルバニア社会に息苦しさを覚え、アルバニアに帰国したら芸術家としての将来がないことに気付いていた。両親とともにフランスに出てこられたときに亡命を決行する。が、そのため、祖父母は強制収容されてしまう。その後、ホッジャは死亡、東欧の社会主義体制が崩壊し、パパヴラミも故国を訪れられるようになる。

 パパヴラミはアルバニアの作家イスマイル・カダレの作品を何冊もフランス語に訳しているという。文学に大きな関心と才能を持っているようだ。子ども時代の心理や体験が実に初々しく語られる。また、隔離された国家で英才教育を受け、フランスに留学して戸惑う様子、徐々に社会主義の中でも特殊な当時のアルバニアの息苦しさに気付いていく様子も実にリアル。文学作品としてもとても優れていると思う。

 何とパパヴラミがジャンヌ・モローの推薦によって映画「危険な関係」に出演して、カトリーヌ・ドヌーヴと共演したという記述がこの本の中にあった。言われてみれば、確かに、パパヴラミは引き締まった体型のなかなかの好男子。さっそくDVDを注文した。

 

 そして、私の新刊の参考書を二冊紹介させていただく。

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 ひとつは、「小論文これだけ! 今さら聞けないウルトラ超基礎」。小論文をまったく書いたことがない、それどころか、子どものころから作文を書くのも大の苦手だったという高校生向けに、一つの文を正しく書く方法など、基礎の基礎から手取り足取り解説している。

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 もうひとつは、「
AO・推薦入試をひとつひとつわかりやすく」(共著)。AO・推薦の志望理由書の書き方、面接の受け方、小論文の書き方を解説(私は小論文を担当)。

 ともに、小論文をこれから始める人にぜひ読んでいただいたい参考書だ。

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