レイ・チェンのバッハの無伴奏ヴァイオリン全曲演奏 何度か魂が震えた
2017年9月30日、サントリーホールでレイ・チェンによるバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、パルティータ全曲演奏を聴いた。素晴らしい演奏だった。
レイ・チェンは1989年、台湾生まれのヴァイオリニスト。メニューイン・コンクール、エリザベート王妃国際コンクールで優勝して話題になっている。「若き貴公子」といわれているらしい。実際、女性客が圧倒的に多かった。
きわめて正統派の演奏。バッハの無伴奏曲の演奏には、大きく分けて「楷書風」と「草書風」があると言われるが、チェンは「楷書」の典型。一音一音を無駄にせず、正確に的確に弾いていく。音そのものが美しい。どこかを特に強調したり、あるいは流したりしない。しかし、音が綺麗で、細かいニュアンスが豊かで、素直に率直に音楽を描くので、スケールが大きくなる。個性的なことは特にしないのだが、まったく無駄がなく、理詰めで音楽が進んで、しかもスケールが大きいので、聞き手を引き付ける。私の好きなタイプのバッハ演奏だ。細かいミスはいくつかあったが、たいした問題ではない。
全体的には、私はパルティータよりもソナタのほうが気に入った。おおらかに真正面からぶつかるソナタのほうが、レイ・チェンには合っているように私には思えた。逆に言えば、まだ舞曲で遊ぶだけの精神的余裕がレイ・チェンにはないのかもしれない。が、率直に真正面からバッハの音楽を演奏しているのが、私には素晴らしく思える。
最後にパルティータ第2番が演奏された。シャコンヌでは、これまで抑えてきた情熱を最後に叩きつけるかのよう。しかし、リズムも音色も崩れない。楷書のまま高揚していく。何度か魂が感動に震えた。
日本人だけでなく、東洋系の優れた演奏家が次々と現れる。うれしいことだ。
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