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ジャームッシュの映画「パーマネント・バケーション」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「ダウン・バイ・ロー」「ミステリー・トレイン」「ナイト・オン・プラネット」

 原稿の締め切りの谷間にあたる。来週からまた気合を入れて原稿を書かなければならないが、今は少しゆっくりしたい。そんなわけで、数日前から、仕事の合間合間にDVDで映画を見ていた。邪道かもしれないが、20分か30分映画を見て、仕事にかかり、仕事に疲れたら、続きを見る・・・というふうにしている。

先日、「パターソン」を映画館で見て、ジム・ジャームッシュに強く惹かれたので、初期の5本を見てみた。簡単な感想を書く。

 

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「パーマネント・バケーション」 
1980

 大学院での卒業制作映画とのこと。ゴダールの影響を強く感じる。主人公二人がアパルトマンで話すところなど、「勝手にしやがれ」のベルモンドとジーン・セバーグを思い出す。「マルドロールの歌」が読まれたり、サックス吹きのエピソードが唐突に現れたり。ベトナム戦争の傷跡というテーマまでもがゴダール風。しかし、風景も感性もアメリカらしい。「永遠の休暇(バケーション=空っぽ)」を強く感じさせる。

 

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「ストレンジャー・ザン・パラダイス」 
1984

 モノクロ映画だが、今見ても実に斬新。ニューヨークに住むハンガリー出身の青年ウィリー。狭いアパートにハンガリーから来たばかりの従妹エヴァを10日間預かることになる。初めはぎくしゃくするが、じょじょに親しむようになる。10日が過ぎてエヴァは去った後、ウィリーはぽっかりと心に空虚を感じるようになる。1年後、いかさまポーカーで儲けた金をもって友人エディーとエヴァの住むクリーブランドを訪ねるが、寒さに耐えかねて三人でフロリダをめざす。が、二人の男はドッグレース金をすってしまい、エヴァはふとしたことで犯罪がらみのお金を手に入れて、ブダペストへの飛行機に乗ろうとするが、結局、三人がバラバラになってすれ違いになりそうなところで終わる。

 ストレンジャー、すなわち「よそ者」、フランス語で言えばエトランジェ(異邦人とも訳せる)。心の空虚、心のすれ違い。場面が終わるごとに画面全体が暗くなって暗転。音楽で言えば、ブルックナー終止のような雰囲気。ぶつ切れの唐突さを感じる。そこがまたいい。

 

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「ダウン・バイ・ロー」 
1986

 もとDJザック(トム・ウェイツ)とチンピラのジャック(ジョン・ルーリー)、イタリア男ボブ(ロベルト・ベニーニ)の三人が、ひょんなことから罪を犯し、同じ刑務所に入り、脱獄に成功する話。軽妙でユーモアにあふれているが、人生の寂しさ、生きる悲しさ、孤独を映像や役者たちの仕草、カメラワークにひしひしと感じる。モノクロの映像はとても美しい。フェリーニの初期の映画を思い出す。が、もっと静謐で静かなユーモアがある。内向的で洗練された独特の世界。大傑作だと思う。

 ベニーニがいい味を出している。ザックとジャックというよく似た二人の対称性を際立たせ、道化の役割を果たして、物語を推進している。

 

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「ミステリー・トレイン」 
1989

 テネシー州メンフィスでの出来事。エリヴィス・プレスリーのゆかりの街であるメンフィスを列車で訪れた日本人カップル(永瀬正敏と工藤夕貴)と、夫を亡くしたばかりのイタリア人女性、メンフィスに住む男達のグループの三つのエピソードから成るオムニバス映画。それぞれがエルヴィス・プレスリーとかかわりを持ち、それぞれすれ違いながら同じ晩に同じホテルに泊まる。

三つのエピソードの重なり具体が実におもしろい。そこに人生の絡みを感じ、やるせない人生を感じ、人間の孤独を感じる。しかし、それが少しも重くならず、深刻にもならない。当たり前のことのように孤独があり空虚がある。考えてみれば、それこそが人生なのだろう。これもまた傑作だと思った。

 

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「ナイト・オン・ザ・プラネット(原題 ナイト・オン・アース)」 
1991年 

 ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキのそれぞれ同じ時間にそれぞれの地域のタクシー運転手の体験を描いている。5つのエピソードによるオムニバス映画。

いずれも皮肉な視点から人生の機微を描いている。映画スターへのスカウトを断るロサンゼルスの女性運転手のエピソードとサーカスの道化をしていたドイツ人のニューヨークの新米運転手のエピソード、そして、ヘルシンキの不幸な運転手のエピソードが私はとてもおもしろかった。

 ヘルシンキのエピソードが特徴的だが、子どもの死という不幸な話でも、ジャームッシュは登場人物に密着しすぎない。クールに人間を描く。だからこそ、いっそう登場人物の心の中の空虚がリアルに感じられる。淡々とドライに抒情を描くとでもいうか。

 有名俳優が次々と出演する。とはいえ、封切り当時はそれほど有名ではなかったのかもしれない。ハリウッド映画と異なって、等身大の人物を俳優たちは演じている。そのような演出に圧倒される。

 

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