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映画「危険な関係」「沈黙 サイレンス」「暗殺のオペラ」「ボーダレス」

 DVDVHSで映画を何本かみた。感想を書く。

 

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「危険な関係」 
2003年 フランス ジョゼ・ダヤン監督

 ラクロ原作によるテレビ映画。監督はジョゼ・ダヤン。時代は1970年代(?)に移されている。このブログにも書いた通り、ヴァイオリニストのパパヴラミの自伝を読んで、この映画の存在を知った。

「危険な関係」は45年ほど前に一度、翻訳で読み、その後、フランス文学を勉強していたころに、フランス語でほんの一部を読んだことがある。とてもおもしろいと思ったが、詳細はまったく記憶にない。映画を見て、改めておもしろいと思った。悪の権化のような男女が理性によって人々の感情をコントロールしようとして自滅してしまう物語とでもいうべきか。映画を見ながら、その昔、二人の悪の魅力にしびれたことを思い出した。

 メルトゥイユ夫人をカトリーヌ・ドヌーヴ、ヴァルモンをルパート・エレヴェット、そのほかにナスターショ・キンスキー、ダニエル・ダリュー、リリー・ソビエスキーが出演するという超豪華キャスト。それにまじって、パパヴラミがダンスニーを演じている。上手な演技とは言えないが、メルトゥイユ夫人とヴァルモンに手玉に取られる実直なヴァイオリニストをきちんと演じている。バッハの無伴奏パルティータやパガニーニのカプリースやブラームスのコンチェルトを弾いている場面がいくつもある。パパヴラミはこれ以外には映画に出演していたらしいのが残念。

 そういえば、「クレーヴの奥方」も「マノン・レスコー」も「アタラ」「ルネ」も40年以上前に読んだっきりだ。老後の楽しみにと思っていたので、そろそろ読み返したくなった。

 

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「沈黙 サイレンス」 マーティン・スコセッシ監督 

 封切時に映画館で見ようと思っていたが、時間が合わなかった。1970年代に遠藤周作の原作を読んだ。その数年後、篠田正浩監督の映画「沈黙」もみた。そして、今度のスコセッシ監督の映画。

 初めのうち、少し違和感を抱いた。日本の農民たちが髷を結っていない! 何人かの日本人がたどたどしいとはいえ英語を話す! ここでの英語はポルトガル語とみなされるものであるにせよ、かなり違和感がある。明らかに西洋から見た「沈黙」にほかならない。日本が舞台のはずなのに日本とは思えない、そんな映画が多いが、それと同じ印象を受ける。

 初めのうち、キチジローを演じる窪塚洋介がハンサムすぎるのにも違和感を抱いた。が、みていくうち、おそらくキチジローとロドリゴ神父(アンドリュー・ガーフィールド)とフェレイラ神父(リーアム・ニーソン)がそれぞれ分身をなしているのだと気づいた。だったら、キチジローも二人の西洋人に負けないほどのイケメンである必要がある。

後半はなかなかの迫力だった。「苦しみを引き受けて、棄教することこそがキリスト者の生き方ではないのか」というテーマが重くのしかかる。ロドリゴがキチジローと頭を重ね合う場面は感動的だった。

とはいえ、篠田正浩監督の「沈黙」を見た時の感動はもっと大きかった記憶がある。ロドリゴの苦悩がもっとひしひしと伝わってきた。神の沈黙というテーマも一層リアルだった気がする。篠田監督のDVDをさがしてみよう。

 

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「暗殺のオペラ」 
1970年 ベルナルド・ベルトルッチ監督

 オペラ演出家の三浦安浩さんにすすめられてみた。1970年代の封切時に見たつもりでいたが、どうやら勘違いだったようで、今回初めてみた気がする。今見ても、衝撃的。原作はボルヘス(確実に読んだはずだが、内容を覚えていない)。

 反ファシストの英雄だった父親が暗殺された町を訪れた青年。父に縁のあった人々が現れ、過去と現在の交錯する異世界へと導かれる。そうして、町全体を舞台にした壮大なフィクションが真相として浮かび上がってくる。

 ストーリーもとてもおもしろいし、映像も美しい。美術作品のような映像が続き、主人公とともに観客も異世界に入りこむ。オペラ劇場で「リゴレット」上演中に父親が殺されたという設定なので、「リゴレット」などのヴェルディのオペラが流れる。そして、シェーンベルクの室内交響曲第2番が異世界を描く音楽として用いられている。私は高校時代、この曲が大好きでよく聴いていた。今でも、ほとんど唯一の私の好きなシェーンベルクの曲だ。ベルトルッチの音楽的センスにも脱帽。素晴らしい映画だと思った。

 

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「ボーダレス ぼくの船の国境線」 アミールフセイン・アシュガリ監督 
2015

 イラン映画の傑作だと思う。

 イランとイラクの国境付近で暮らすイラン人少年。どうやら孤児らしい。国境付近の廃船をねぐらにして魚を取り、装飾品を作って生活している。ところが、そこにイラク人少年兵が入りこんでくる。初めは場所争いをするが、少年兵と思えたのが実は少女であり、赤ん坊を育てていることがわかる(その赤ん坊が少女のきょうだいなのか子どもなのかは最後まで明かされない)。少年はいつのまにか少女と一緒に赤ん坊の面倒を見るようになる。ところが、そこに今度は米兵が現れる。少年たちは米兵を捕らえて部屋に閉じ込めるが、悪い人間ではないとわかって解放し、赤ん坊を含む4人で生活するようになる。だが、数日後、少年が船を離れて戻ってみると、船は荒らされ、3人の姿は消えていた。

 イランとイラクは戦争状態にあり、アメリカはイラクを攻撃している。つまり、イラン人、イラク人、アメリカ人が廃船の中で対峙するということは、被害者、加害者を成す三人が顔を合わせたことになる。しかも、三人はそれぞれ言葉が通じない。その三人がたまたま同じ場に居合わせて心を通じ合わせるようになる。しかし、無残な結末に終わる。

ある意味で実にわかりやすい図式を描いているが、人物それぞれが置かれた不遇な状況の中で必死に生きている様が伝わってくるのでリアリティがある。米兵が赤ん坊をあやす場面はとても感動的だった。

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コメント

樋口先生、暗殺のオペラ、ご覧になりましたか!DVDをお渡ししなければと思いながら、時間だけ経ってしまい悔やんでいました。ヴィットリオ・ストラーロの撮影が本当に素晴らしいのでいつか機会があれば劇場で是非ご覧ください。僕もまた観たいです。TV映画なのですが、何と不思議な官能性を湛えた作品なのでしょう。何度見てもその迷宮に引き込まれます。

投稿: 三浦安浩 | 2017年10月12日 (木) 11時33分

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