藤原歌劇団「ノルマ」 歌手たちが粒ぞろいだった
2017年10月22日、台風が近づいている。大雨の中、衆院選の投票所に行き、その足で、かるっつかわさきホール(川崎市スポーツ・文化総合センターのホール)に向かった。下半身がずぶぬれになったまま、藤原歌劇団公演「ノルマ」をみた。
主役格の歌手は粒ぞろい。そのなかでも、ノルマを歌ったマリエッラ・デヴィーアがやはり圧倒的だった。前半は少し抑え気味だったが、後半、澄んだ美声がホール内に響き渡った。高貴で威厳のある声なので、ベッリーニにぴったりだと思った。アダルジーザのラウラ・ポルヴェレッリも素晴らしかった。デヴィーアと声の質が似ているので、遠くからだと時々どちらが歌っているのかわからなくなるほどだった。そうであるだけに、二重唱の声の重なりが時にうまく溶け合った。ポリオーネのステファン・ポップも張りのある声が魅力的だった。オルヴェーゾの伊藤貴之、クロティルデの松浦麗、フラーヴィオの二塚直紀も藤原歌劇団合唱部もとても良かった。全体的にとてもレベルの高い公演だった。
私としては、沼尻竜典指揮のトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアが少し気になった。いや、演奏がよくないわけではない。とてもよくまとまっていたと思う。ただ、やはりベッリーニのそもそものオーケストレーションがうまくない。ワーグナーやシュトラウスを聞きなれた私としては不満で仕方がない。
マエストロ沼尻は少し遅めのテンポを取っていたと思う。私はそれはとても的確な判断だと思う。遅めのほうがベッリーニの凛として高貴な声を引き立たせることができる。だが、遅めのテンポでじっくり演奏されると、どうしてもベッリーニのオーケストレーションのアラが目立ってしまう。ニュアンス豊かに演奏のしようがないので、どうしても退屈してしまう。第二幕のノルマとアダルジーザの二重唱の女同士の友情と恋の板挟みがドラマティックに響かない。ドラマが平板になってしまう。
粟國淳の演出は、おそらく生命を強調したのだろう。どの幕も、木を模したと思われる円筒が大きく開いて、その中で物語が展開する。色彩も美しく、動きが抽象化されているために、いっそう普遍性が高まっているように思えた。
帰りには、少し雨は小康状態にあったが、自宅に帰り着く少し前から土砂降りになってきた。今晩、何事もなく台風が過ぎてくれればよいが・・・。
予想通り、与党大勝。が、ともあれ立憲民主党が誕生したことで、政党がわかりやすくなった。立憲民主党が力をつけて、自民党とともに二大政党を担うようになれば、日本の政治ももっとよくなるのかもしれない。
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