ダムラウ 当代随一の声の美しさ
2017年11月10日、サントリーホールでディアナ・ダムラウ&ニコラ・テステ オペラ・アリア・コンサートを聴いた。素晴らしかった。
ダムラウは圧倒的に素晴らしい。「セヴィリアの理髪師」「ロメオとジュリエット」「清教徒」「ディノーラ」「椿姫」の有名なアリア。まさしくコロラトゥーラ・ソプラノの定番曲。高音の美しさ、声のコントロールは当代随一ではないか。現在のグルベローヴァよりもネトレプコよりも、声の美しさという点ではダムラウのほうが上ではないのか。完璧な音程でクリアに最高に美しい声が響く。声を聴くだけで魂が震えるほどにすごい。ネトレプコのように感情豊かではないが、声の技術によって聴衆を引き付ける力を持っている。
バス・バリトンのテステもとてもよかった。「セヴィリアの理髪師」のドン・バジーリオのアリアはちょっと伸びが足りないと思ったが、「ドン・カルロ」のフェリペ王のアリア、「さまよえるオランダ人」のダーラントのアリア、「ひとり寂しく眠ろう」は深く余裕のある声でみごと。
ただ、私はパーヴェル・バレフの指揮については大いに疑問を抱いた。東京フィルハーモニー交響楽団はよくついていたが、私の最も嫌いなタイプの指揮だ。音をコントロールしないで、野放図に鳴らす。一本調子になり、ニュアンスが欠けてしまう。大きな音を出すが、ニュアンスがないので迫力を感じない。冒頭の「セヴィリアの理髪師」序曲も勢いがなかったし、「さまよえるオランダ人」の序曲は耐えがたく感じた。「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲もあまりに平板。オーケストラ曲が5曲演奏されたが、それほど多く演奏する必要はあったのだろうか。
それと、全体的に音が十分に響かないのを感じた。2011年に東京文化会館でメトロポリタン歌劇場の来日公演「ルチア」をみた時、ダムラウの声量、元気いっぱいの声に圧倒された。それに比べると、音量が小さい。意識的なのか、それとも席のせいなのか。私は2階席だったが、もっと前方で聴けば、もっと声に酔えただろうと思った。
アンコールは3曲。ダムラウによる「春よこい」と「ポギーとベス」の二重唱、最後にダムラウの「ジャンニ・スキッキ」のアリア。とりわけ、「ジャンニ・スキッキ」は絶品。感動した。本当に美しい声! 終演は21時50分くらいだった。
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