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スターファーム第一回公演「メイキング・カルメン」 そして、日本シリーズ第5戦

 2017112日、13時から、東京メトロポリタンオペラ財団 スターファーム第一回公演「ニューオペラ(新歌劇) メイキング・カルメン」を見た。

 1980年代、アントニオ・ガデスが出演した「カルメン」という映画をみた覚えがある。フラメンコ集団が「カルメン」を上演することになる状況をオペラ「カルメン」と重ね合わせた物語で、中にふんだんにフラメンコが登場する映画だった。私はスペインでフラメンコを見て衝撃を受けて以来、一時期、フランメンコの映画をみたり、カンテのCDを聴いたりしていた。今回の「メイキング・カルメン」はそのオペラ版のような舞台。

 スターをめざすオペラ歌手とその演出家、ジョルジュ・ビゼーをめぐる家族や周囲の人々の確執と「カルメン」が重なり合う。ビゼーは自分の人生を「カルメン」に重ね合わせて作曲しており、演出家は自分をビゼーやドン・ホセと重ね合わせる。オペラ歌手たちはカルメンやカルメンの同僚の女工たちと重ね合わせる。それが同時進行で進んでいく。混乱してわからないところ、整合性のないところもあるが、歌があり、音楽があるため、さほどそのようなことは気にならなくなる。そして、それぞれの生き様、エネルギー、苦しみ、生きる力が現実のものとして浮かび上がってくる。

 実は私は、かつてフランス文学を学んでいたが、フランス音楽はあまり聴かない。好むのはもっぱらドイツ系であって、フランス・オペラ、イタリア・オペラは最近になって関心を持ち始めたに過ぎない。「カルメン」も実は数回しかみたことがない。だから、良く知らない。作曲家のビゼーについても、何枚かCDを聴いている程度。音楽の断片が出てきてもすぐにそれとわからない。今回、「カルメン」以外の歌もいくつか歌われたように思うが、曲名を知らない。

 休憩時間を入れて、2時間半ほどの上演だったが、とてもおもしろかった。あっという間の時間だった。実にセンスがよく、よくわからないところはたくさんあるが、それでも納得がいく。台本、演出の三浦アンコウさんのマジックだと思う。これはまちがいなく前衛劇、前衛オペラの範疇に入ると思うが、楽しくて面白くて、オペラ入門にもなって、総合芸術にもなっている。まったく小難しくない。素晴らしい。

 役者・歌手たちはまさに「スターファーム」を成す新人たち。やはりどうしても、芝居が学芸会的になる人もいるし、音程も不安定になりがちだが、全体的にはとてもレベルが高い。私はカルメンなどのいろいろな役を演じる鈴木麻由に特に惹かれた。この歌手は、昨年だったか、風の丘HALLでみた「オテロ」でも見事な歌と演技を披露してくれたのを覚えている。ちょっと音程が不安定になることはあったが、しっかりした声と演技。全体を引き締めている。そのほか、ドノ・ホセの青柳素晴、エスカミーリョの大山大輔(三枝作曲の「狂おしき真夏の一日」で聴いたばかり)、フランスキータの宮埜舞もとてもよかった。

そのほか、多くの歌手たちが大健闘。ただ、私はもう一人の題名役の歌手の方の発声と音程の不安定さに大きな問題を感じた。そのために、聴くのがつらくなる場面もあった。

 しかし、このような試みは素晴らしい。オペラを外国の素晴らしいものとして崇めるのではなく、自分のものとしてどんどんと広めたい。そのような意図が伝わってくる。

 

 終演後、急いで自宅に帰り、すぐに着替えて日本シリーズ第5戦の観戦に行った。

 我が家は、一家を上げて1990年代からのベイスターズ・ファンだ。そのころは、年に4、5回家族で横浜スタジアムの観戦に行った。1998年に大魔神を要する横浜ベイスターズが優勝した時には、我が家もお祭り騒ぎだった。横浜ベイスターズが低迷し、DeNAベイスターズになり、優勝時のメンバーが一人また一人と減っていってからは、徐々に我が家でも野球から関心が離れていた。

が、今回、DeNAベイスターズは奇跡的に19年ぶりの日本シリーズ進出を果たした。しかも、家族の中で最も熱くベイスターズ・ファンを続けてきた息子が来年から広島に赴任する。きっと息子は来年から広島ファンになるだろう。私の中でベイスターズ熱が再燃。息子と二人で応援に出かけることにした。第4戦で終わるのではないかと心配していたが、ベイスターズが一矢を報いたために、第5戦も行われた。

17年ぶりくらいの横浜スタジアム。超満員で、日本シリーズ独特の興奮した雰囲気。DeNAになってから初めてベイスターズをみた。初めてなまの筒香、宮崎、山崎康晃をみた。筒香のホームランをみた。「ヤスアキ・コール」に参加した。95パーセントがDeNAファンで埋め尽くされていたが、数万人の応援に加わった。勝利に酔った。

野球終了後、息子と二人で中華街で祝杯を挙げてから帰った。

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コメント

樋口先生、昨日はご来場ありがとうございました。ご挨拶できず失礼しました。半年間毎週火曜日の稽古で様々なレベルの団員と試行錯誤しながら作り上げました。色々お聞き苦しいところ、お見苦しいところあったと思いますが、先生を始めたくさんのお客様に激励の拍手をいただき感無量です。ちなみにカルメンの以外の音楽はピアニストが幕間にブラームスやプロコフィエフなどのさわりを弾いていた以外は、ありません。同じ曲を言語を変えたり、歌い方を変えて印象を変えてみました。これからもどうかよろしくお願いします。

投稿: 三浦安浩 | 2017年11月 3日 (金) 11時25分

三浦安浩 様
コメント、ありがとうございます。昨日は、こちらこそご挨拶をせずに申し訳ありませんでした。失礼と思いながら、最初に席を立って、小走りで駅に向かいました。いったん家に帰って、寒さに備えた服装で日本シリーズを観戦したかったのでした。
1人の観客として率直な感想を書かせていただきました。しかし、本当に面白くみせていただきました。三浦マジックだと思いました。わからないところ、矛盾したところがありながらも、なぜみんなが納得してしまうのか・・・、不思議な感じがします。
そうですか。全部「カルメン」の音楽でしたか。私の無知をさらしてしまいました。60歳を過ぎて、やっとモーツァルト、ベートーヴェン、ワーグナー、シュトラウス、ベルク以外にも面白いオペラがたくさんあること、イタリア・オペラもフランス・オペラもおもしろいことに気付きました。これからも楽しもうと思っています。

投稿: 樋口裕一 | 2017年11月 3日 (金) 12時57分

いえいえ、カルメンは(カルメンだけではありませんが)定義されることを拒む作品だと思います。先生に面白いと思ってもらえたことがとても嬉しいです。また将来ちょっと手直しをして再演できたらと思います。

投稿: 三浦安浩 | 2017年11月 3日 (金) 14時27分

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