アトリウム弦楽四重奏団 とんがったチャイコフスキーにびっくり!
2017年12月1日、横浜市鶴見区にあるサルビアホールでアトリウム・ストリング・クァルテットのコンサートを聴いた。凄まじい演奏。驚くべき技巧、音程がよく、クリアで明晰。エベーヌ弦楽四重奏団やモディリアニ弦楽四重奏団と同じタイプといってよいかもしれない。ただ、ロシア出身の四人であるせいか、フランス系の人たちよりももっと不思議な偏りがある。それがとても魅力的だ。
最初はブラームスの弦楽四重奏曲第1番。第1楽章と第4楽章の音の重なりの鮮烈さに魂が痺れた。勢いのある音でこれでもかと鋭くて透明な音を重ねていく。素晴らしい。第一ヴァイオリンのボリス・ブロフツィンがめっぽううまい。ただ第2楽章と第3楽章は、ややもたれ気味だった。緩徐楽章の緊張感の持続の欠如という点で課題が残るのではないかと思った。
2曲目はヴィトマンという1973年生まれのドイツの作曲家の弦楽四重奏曲第3番「仮の四重奏」。四人そろって弓を大きく振り、「ハイ」と叫んでから演奏が始まり、曲の途中でも叫び声が入る。そして、リズミカルで激しくて、しかも様々な弦の現代音楽的な奏法を使った音楽が展開される。とはいえ、聴いていて飽きない。メンバーのテクニックにも驚いた。
そして、後半はチャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番。始まってすぐ、「あれ? チャイコフスキーが演奏されるはずだったのに、別の曲が始まったのかな?」と思った。チャイコフスキーの音がしない! 物憂げな抒情がない。独特の「チャイコフスキー節」がない。まるで現代音楽のような鋭角的な音楽。まるで顕微鏡で見たような分析的な音楽とでもいうか。しばらくして、やっと間違いなくチャイコフスキーの曲だと気づいた。チャイコフスキー好きはこのような演奏に不満を持つかもしれない。が、私のように、時々チャイコフスキーの浪花節的な思い入れに辟易する人間には、このようなアプローチは新鮮でいい。しかも、これはこれできわめて知的でクールな抒情がある。時々ぐいぐいと心に刺さる。
アンコールはボロディンの弦楽四重奏曲第2番第3楽章、あの有名な「ノットゥルノ」。あのゆったりとした夜の叙情は聞こえてこないが、先鋭的な抒情がそれはそれでとても魅力的。とてもおもしろいと思った。
もっとも感動したのは最初のブラームスの弦楽四重奏曲第1番だった。それ以外の演奏について手放しで素晴らしいという気はないが、とてもおもしろく、とても興味をひかれる演奏だった。
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