2017年の「ベートーヴェンは凄い」も凄かった!
2017年12月31日、東京文化会館で、「ベートーヴェンは凄い」を聴いた。小林研一郎指揮、岩城宏之メモリアル・オーケストラ。コバケン10回目のベートーヴェン全国響曲演奏。昨年は風邪、一昨年は父の死から間のない大晦日に母を一人にするわけにはいかずに欠席したが、その前は数年連続して聴いていた。3年ぶりの「ベートーヴェンは凄い」ということになる。
まず、オーケストラの素晴らしさに圧倒された。各オーケストラから名手が集まって結成された特別編性のオケだけに、研ぎ澄まされ、しかも厚みのあるオケになっている。管楽器の美しさにほれぼれした。金管も、もちろん弦楽器のこの上なく安定している。そして、ティンパニのすごさ。世界の一流オーケストラにまったく引けを取らない。
マエストロは年齢を重ねているためか、3年前よりは少しおとなしめ。初めて聴いたときには第1番から凄まじいテンションに驚いたが、今回は最後まで力を温存するためか、第1番・第2番あたりまでほんの少し軽め。第1楽章・第4楽章ではコバケン特有の燃焼する音楽づくりだが、ほかの楽章は力で押さずにじっくり聞かせようとする。
が、第3番「エロイカ」あたりから、燃焼度がぐいぐい高まってきた。私は3番・5番・7番・9番に圧倒された。コバケンは奇数番号の交響曲が圧倒的。とりわけ第7番は奇跡的な名演だと思った。音の勢いが凄まじい。躍動し、音が絡み合う。実はあたしは奇数番組が好きだというわけではない。4番と8番は大好きなのだが、マエストロの演奏はこれらも奇数番号風で疾風怒濤の完全燃焼なので、私としてはもう少し違った表現を求めたくなる。
そして、第九。これもすさまじい。オーケストラも大編成。合唱は間違いなく200人以上いたと思う。まさしく大合唱だ。私は今年聴いたエッシェンバッハ+N響よりも、ゲッツェル+読響よりもずっと説得力を感じた。日本人指揮者は第九を知り尽くしているので、見事に演奏してくれる。新しい解釈は特にないと思う。かなりオーソドックスな解釈。だが、完全燃焼、全力投球なので、すべてが心に響く。最後の2分間のコバケンの燃焼は、ほかのどのような巨匠の演奏よりも圧倒的に人の心を動かす。
ソリストはスプラノの市原愛、アルトの山下牧子が素晴らしかった。テノールの笛田博昭、バリトンの青戸知はよく声を出していたが、意図的なのだと思うが、あまり第九らしからぬ歌い方。私には少し違和感があった。
年に一回、大晦日に完全燃焼のベートーヴェンの交響曲全曲を聴くというはいいものだ。自分もそれまでの一年を完全燃焼させて次に移れる気持ちになれる。
ただ、客席が明るかったために、マナーのよくない客が何人も目に入った。プログラムが充実し(とても役に立つ文章がたくさん出ている!)、しかも場内が明るいために、プログラムをずっと読んでパラパラ音を立てている客が何人もいた。
そして、もう一組、とてつもなく非常識な男女を見た。夫婦か友達か親子かはわからなかった。男性は60代か。女性はもう少し若く見えた。一階の中央前方の良い席。演奏が始まると女性は編み物を始めた! 近くの席の人は、編み物の手の動きが邪魔だろう。それ以前に「ながら聴き」は演奏家に対してあまりに失礼だと思う。それだけならまだしも、演奏中に2人でしばしば話をする。そのうえ、男性は演奏中に何度もペットボトルの飲み物を飲み、スマホをいじり、ガサガサ音を立ててパンフレットを読む。2人とも何度か演奏中に目薬をさしていた。まったくもって自宅でテレビを見ている感覚。公と私の区別の欠如とでもいうか。
久しぶりにこれほどマナーの悪い客を見た。誰か近くの被害を受けている人、あるいは一緒に来ていた仲間が注意するべきだと思う。本人たちはきっと自分が周囲が呆れるほど非常識だと気付いていないのだろう。私も注意したかったのだが、席が遠かったし、私自身は音の被害を受けているわけではないので、呆れてみていることしかできなかった。
というわけで、2018年になった。2017年にはラ・フォル・ジュルネを含めて87回のコンサートやオペラを聴いた。9回、海外旅行に行った。3月に定年退職して、あれこれ焦って遊びまくった感がある。2018年には少しペースを落としてあれこれをじっくり楽しみたいと思っている。
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