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 映画「希望のかなた」と「プラハのモーツァルト」

 新作の映画を2本みた。感想を簡単に記す。

 

映画「希望のかなた」 アキ・カウリスマキ監督

 アキ・カウリスマキ監督のフィンランド映画。シリアのアレッポで暮らしていた青年カリードは内戦で婚約者と家族を失い、妹とともに国を逃れたが、いくつもの国で追放されてさまよううちに妹とも生き別れて、偶然乗った船でフィンランドにやってきた。難民申請をするが、受け入れられず、ここでも国内退去処分になる。警察から逃れて、偶然出会ったレストラン経営者の世話になり、そこの従業員の助けを得て不法に働くようになる。妹と再会できるが、移民排斥の国粋主義者から迫害され、ナイフで刺されてしまい、不安定な状況が続く。

 前作「ル・アーヴルの靴磨き」とよく似た筋立てで、同じく難民とそれを取り巻く人々の人情を描いている。「ル・アーヴル」のほうはフランスを舞台にして、まるで1930年代のジャン・ルノワールやジュリアン・デュヴィヴィエやルネ・クレールのフランス映画のように下町の人々を描いたのだったが、今回は、ノスタルジックな雰囲気はなく、静かにフィンランドの状況を描く。

 無口で表情のない登場人物の説明のほとんどない映像がとても魅力的だ。確かなリアリティがあり、人々の心の奥にある愛情、それにもかかわらず無理解な社会状況がしっかりとつたわってくる。そして、カウリスマキの強い憤りがじわじわと伝わる。

 それにしても、妻と別れ、一か八かの賭けをし、レストランを経営し、試行錯誤でやっていく男の描き方が実にうまい。その人間味が伝わってくる。カウリスマキらしい佳作といえるだろう。

 

「プラハのモーツァルト」 ジョン・スティーブンソン監督

 モーツァルトが主人公で、舞台がプラハというのであれば、みないわけにはいかない。退屈しないで最後までみたが、良い映画とは言えないだろう。モーツァルトの伝記について、それほど正確なことは知らないが、ほとんど史実に基づいてはいないと思うし、モーツァルトについての新しい解釈を示しているわけでもなさそう。

プラハに招かれたモーツァルト(アナイリン・バーナード)は、「フィガロの結婚」のプラハでの上演でケルビーノを演じた貴族の令嬢(モーフィッド・クラーク)と恋に落ち、作曲中の「ドン・ジョヴァンニ」のドンナ・アンナに抜擢する。ところが、オペラ劇場を支配し、権力にものを言わせて次々と女性を毒牙にかけるサロカ男爵(ジェームズ・ピュアフォイ)が令嬢に目をつける。その状況を知ったモーツァルトは、令嬢を救おうとするが、男爵は抵抗する令嬢を襲おうとして殺害してしまう。モーツァルトは、自分の愛と悲しみの体験を「ドン・ジョヴァンニ」に重ね合わせて完成させる。

 かつての「アマデウス」とは違ったモーツァルト像。若くて溌溂として元気にあふれるモーツァルト。「アマデウス」よりはこちらの方が実像に近いだろうが、ただ映画の登場人物としては魅力に欠ける。「ドン・ジョヴァンニ」がプラハで初演されたことはよく知られているが、この映画は、ただドン・ジョヴァンニ的な悪漢が実際に存在したとしたら?・・という思い付きで作っただけに思える。

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