ヘンデルのオラトリオ「テオドーラ」 テオドーラの凛とした美しさ
2018年1月14日、浜離宮朝日ホールでヘンデル作曲のオラトリオ「テオドーラ」を聴いた。第15回ヘンデル・フェスティバル・ジャパンのイベントだ。
このオラトリオを聴くのは初めて。そもそも、実はヘンデルを聴くこともほとんどない。が、数年前、ザルツブルク音楽祭でこのオラトリオが上演された時から、関心を持っていた。一度聴いてみたいと思っていた。
第一部は少々退屈だと思ったが、第二部以降はとてもおもしろく聴くことができた。美しいメロディがたくさん出てくる。すがすがしかったり、抒情的だったり。深い信仰も示される。しかも、とてもわかりやすい。テオドーラの凛とした美しさが描かれている。確かに素晴らしい音楽世界だ。
ただ、あまりの長さにびっくり。ローマ時代、キリスト教徒の処女テオドーラは異教の神々を崇拝することを拒否したために、総督に娼婦になることを命じられる。テオドーラを愛する青年ディディムスは策を弄して助けようとするが、ついには、二人ともに死刑になる。それだけのストーリーなのだが、3時間半近くかかる。ワーグナーでもこれだけのストーリーなら1時間半くらいの一つの幕で終わるのではないかと、ヘンデル初心者の私は思ってしまう。同時に、きわめてプリミティブな感想だが、純潔に対するキリスト社会の強い思い入れに改めて驚いた。
男声(バスの牧野正人、テノールの辻裕久)も健闘していたが、女声のほうがいっそう充実していた。アルトの山下牧子はとても安定した歌唱。じっくりと美しく歌った。ソプラノの阿部早希子はきれいな声で清澄に歌って、テオドーラの凛とした美しさを表現していた。
とりわけ素晴らしかったのは、メゾ・ソプラノの波多野睦美だ。英語の語り口が見事。ほかの歌手では聞き取れない発音も、波多野が歌うとしっかりと聞きとれる。この種の音楽で発音の明瞭さがいかに大事であるかが良くわかる。しかも、とても美しい声。この人がいたからこそ、このオラトリオが成功したのだと思う。
キャノンズ・コンサート室内合唱団&管弦楽団もとてもよかった。初めのうちは合唱の音程が不安定なことがあったが、徐々にしっかりして来た。後半素晴らしかった、オーケストラはとてもよかった。ヘンデルの音楽を聞きこんでいるわけではないので、指揮については何も言えないが、三澤寿喜の指揮はめりはりもあり、リズムもよく、ヘンデルの素晴らしさを見事に引き出していると思った。
ところで、会場が異様に寒かった。まるで野外コンサートのよう。私は第二部の間、コートにくるまって聴いていた。何か事情があったのだろうか。第二部の終わりころになってやっと暖房が入ったようで、第三部ではコートを脱ぐことができた。
ヘンデルをもっと聴いてみたいと強く思った。
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