新国立劇場「松風」 大変おもしろかった
2018年2月18日、新国立劇場で細川俊夫のオペラ「松風」をみた。私は「能」についてまったくの無知なので、詳しいことはわからないが、「松風」というのは有名な演目らしい。それに題材を得た細川のドイツ語台本によるオペラだ。現代オペラを見慣れているわけではないので、素人じみたことしか言えないが、ともあれ、大変おもしろかった。
まず何よりも音楽に惹かれた。能を意識しているのだろう。幽玄な音。現代音楽に慣れていない耳にも違和感がない。説得力を持って迫ってくる。ドラマティックであり、官能的であり、しかも奥が深い。
指揮はデヴィッド・ロバート・コールマン。オーケストラは東京交響楽団。この複雑な音楽を美しい音で、見事に聴かせてくれた。松風を歌うイルゼ・エーレンスも村雨を歌うシャルロッテ・ヘレカントも、そして旅の僧のグリゴリー・シュカルパも、これ以上は考えられないほどの素晴らしさ。須磨の浦人を歌う萩原潤も見事。新国立的情合唱団の歌手たちもとても良かった。音楽に関しては、私に理解できる限りでは、すべてにおいて素晴らしいと思った。
演出・振付はサシャ・ヴァルツ。歌手のほかにほとんど常に、登場人物の分身(と思われる)ダンサーが、心の中を表現するような動きで舞う。松の木を模した人々も情動のうごめきを肉体によって表現する。登場人物が歌手、ダンサーたちへと増幅されて舞台いっぱいに広がっていく。松風と村雨が想う在原行平もダンサーによる情動として表現される。
「能」のような舞台を想像していたら、まったく違っていた。ベトナムの農民のような服装のダンサーが現れて、まるでベトナムの人形芝居のような動きをする。日本人としては、「能」とベトナムの人形芝居を一緒にしてしまうなんてなんという無理解!と感じて少々むっとしたが、おそらくヴァルツはそのことは百も承知でこのような演出を行っているのだろう。ただ、どういう意図があってそうしているのか、実はよくわからなかった。
わからないところはたくさんあったが、ともあれ大変楽しむことができた。
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