ヤルヴィ+N響のサン・サーンスとフォーレ 「レクイエム」に少々不満を覚えた
2018年2月17日、NHKホールで、パーヴォ・ヤルヴィ指揮による NHK交響楽団定期演奏会を聴いた。曲目は、前半にデュリュフレの「3つの舞曲 作品6」、 樫本大進のヴァイオリンが加わってサン・サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番、後半にフォーレの「レクイエム」。全体的にとても良かったが、感動するまでには至らなかった。
デュリュフレのこの曲は初めて聴いた。とてもおもしろいと思った。N響の音も、時々ハッとするほど繊細で美しい。ヤルヴィの出す音は、フランス音楽にしては強靭。中身の詰まった音とでもいうか。しかし、それはそれであまりに美しいので、説得力がある。
サン・サーンスは素晴らしかった。樫本のヴァイオリンも含めて、あまりフランス的ではなく、むしろドイツ的だと思う。情熱的で鋭くて厚みがある。フランスのヴァイオリニストが弾くような色気のようなものは少々不足している。が、理詰めに音楽が重なり合うので、私としてはまったく不満はない。かなり興奮した。サン・サーンスの音楽はこのように演奏しても、その美しいメロディと熱い情熱、そして理知的な構成は伝わってくる。第二楽章は息を飲む美しさだった。
ちょっと不満だったのは、最も期待していたフォーレのレクイエムだった。もちろん、とてもよい演奏だと思う。静かな音を重ね、しかもひとつひとつの音が強靭。えもいわれぬ美しい部分がたくさんある。「サンクトゥス」の最後の部分の美しさには圧倒された。そして、終曲「天国に」はまさに天国的。素晴らしかった。N響の音の美しさ、東京混声合唱団の声の美しさは十分に味わうことができた。
が、私には音楽全体がちょっとカチッと決まりすぎている気がする。ふくよかさ、敬虔なぬくもりといったものが感じられない。フォーレのレクイエムの私のもっとも好きな部分がない。私の勝手な思い込みかも知れないが、わたしはもっと静かに包み込むような優しさにあふれていてほしいと感じてしまう。
そして、ソプラノの市原愛とバリトンの青山貴にも、私は少々不満を覚えた。ちょっとオペラ的すぎる歌い方だと思った。しかも、ちょっと音程が不安定なところもあったように思う。もっと敬虔でもっと清澄な声と歌い回しのほうが、この曲には合っていると思う。
そんなわけで、とてもよい演奏だったと思うのだが、私の求めるフォーレのレクイエムではなかった。その点で不満が残った。
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