バティストーニ+東フィルの「カルミナ・ブラーナ」 アマチュアっぽかったが、大いに感動!
2018年3月4日、新宿文化センターでアンドレア・バッティストーニ指揮、東京フィルハーモニー交響楽団によるコンサートを聴いた。前半はラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲、後半にはオルフの「カルミナ・ブラーナ」。
ホールに到着してびっくり。いつもと雰囲気がまったく異なる。アマチュアの発表会のような雰囲気。コンサート慣れしていない感じの人たちが大勢で、ご近所話をしているのが耳に入る。子どもたちも目立つ。
300人前後の大合唱団が登場。新宿文化センター合唱団ということだが、見るからにアマチュアの人たち。圧倒的な高齢者がほとんど。「カルミナ・ブラーナ」の児童合唱は新宿区立花園小学校合唱団とのことで、これマアマチュア。観客も、まさに「うちの子どもが出てる!」「あそこに、じいじがいる」という雰囲気。正面前方に、演奏中、堂々と撮影している高齢者もいる! 子どもの発表会のような意識なのだろう。
実はかなり心配になった。ひどい演奏になりはしないか? とんでもないコンサートに来てしまったのではないか? ところが、ところが!
いや、初めはやはり合唱の精度の低さを感じた。300人いるとは思えない音量だし、音程はぴしりと決まらないし、輪郭がぼやけているし・・。しかし、聴き進むごとに納得していった。いやあ、大健闘! バッティストーニの独特のクレシェンドにも、ドラマティックな味付けにも、合唱はしっかりとついていっている。細かいニュアンスもしっかりと伝わってくる。オーケストラとの掛け合いも見事に決まっている。何度も感動に震えた。
独唱者が素晴らしかった。バリトンの小森輝彦が見事な歌い回しで、全体を引き締めていた。そして、ソプラノの伊藤晴もしっかりした音程と強い美しい声で素晴らしい。カウンターテナーの彌勒忠史も白鳥の歌を不思議なユーモアを交えて歌い、実に楽しかった。
東フィルにはときどきがっかりさせられることがあるが、今回は、まったく文句なし。もちろん、合唱との掛け合いでところどころ不発に感じるところもあったが、そのような細かいところは気にしなくてよいような雰囲気が全体にみなぎった。最高に楽しい。生きることの苦しみと楽しみと自然の営みの偉大さが大音量で、そして、全身の躍動によって伝わってくる。歌っている人のほとんどがかなりの高齢者なのに、まさしく「春」の躍動が伝わる。
「カルミナ・ブラーナ」を取りすまして演奏しても仕方がない。あら捜ししても仕方がない。演奏者とともに観客も楽しみ、命を感じ、音楽に感動すれば、それでいい。その意味で最高の演奏だった。アマチュアが混じって演奏するのに適した曲であり、そのようなダイナミックな演奏だった。老いも若きも、プロもアマも、クラシック通もクラシック初心者もみんなで生きることの苦しさ、楽しさ、音楽の楽しさをともに味わうことができた。実はこれこそが音楽の喜びなのだろう。
実は私は大袈裟な身振りの指揮者は好きではない。が、このバッティストーニの音楽を聴くと、その大きなドラマに引き付けられる。演奏者と一緒になって感動してしまう。1987年生まれというから、30歳そこそこの若い指揮者なのだが、いやあ、すごい指揮者だ!と改めて思った。
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