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アルモドバル監督の映画

 スペインの映画監督ペドロ・アルモドバルの作品をこれまでみたことがなかった。DVDを何本か見たら、これがなかなかおもしろい。感想を書く。

 

21f0zkq7ejl_ac_us160_ 「バチ当たり修道院の最期」 1983年

 なんだかよくわからない映画だった。ヘロイン中毒の歌手ヨランダは、恋人がヘロイン接種で中毒死したために修道院に逃げ込む。ところが、その修道院は資金切れで閉鎖間近。しかも、尼さんたちはヘロインを平気で吸ったり、神父と恋に落ちていたり、官能小説の作家だったり。しかも、ここでは虎が飼育されている。厳しい修道院長がやってきてついに閉鎖になり、ヨランダも去っていく。はて、アルモドバルは何をしたかったのか。謎だ。

 

51cgml2xxnl_ac_us160_ 「グロリアの憂鬱」 1984年

 不思議な映画。マドリッドの剣道教室(ちゃんと、日本式にきちんと練習しているようだ!)の掃除婦をする中年女性グロリア(カルメン・マウラ)。うだつの上がらないタクシー運転手の夫、口うるさい義母、ドラッグ売人の長男、年上の男性の性の相手をしているらしい次男、隣に暮らす売春婦、そこに出入りするいかがわしい客たち、同じアパートに暮らす母娘(その娘は超能力者!)との救いのない生活が深刻にならないタッチで描かれる。グロリアも気軽にいきずりのセックスをし、ドラッグ漬けになり、夫を死なしてしまう(あえて、「殺して」とは言わない)が、家族全員がそれほど大きなこととはとらえていない。

現実的とは言えないことばかり起こるが、不思議なリアリティがある。「バチ当たり修道院の最期」と似たタッチだが、私はこの映画には魅力を感じた。ありそうもない話の展開の中に人間の本質的な部分を描いているといえるだろう。あえて言葉にすれば、「孤独感」ということになるだろう。

 

51xlbprr0l_ac_us160_ 「私の秘密の花」 1995年

 覆面ベストセラー女流作家レオは、自分の才能と激しい感情を持て余している。愛する夫に親友との長年の裏切りを告白される。才能を認める編集者に愛され、レオも徐々に愛を取り戻していく。そんなストーリーにまとめられるだろう。が、ストーリーそのものよりも、鮮やかな色遣い、ドタバタした中での深い孤独感の表現が見事だと思う。レオのどうにもならないやるせない気持ちが伝わってくる。とても良い映画だと思う。

 

51vkl4eirl_ac_us160_ 「トーク・トゥ・ハー」 2002

 とてもおもしろかった。

 牛との戦いで植物状態になった女闘牛士の恋人であるノンフィクション作家と、同じように植物状態になった若きバレリーナを介護する介護士の若い男性。以前、オペラ観劇(パーセルのオペラのようだ)中に出会い、その後、病院で言葉を交わすようになった二人の男性が友情を深めていく。女闘牛士は死に、バレリーナは奇跡的に意識を取り戻す。だが、介護士は植物状態のバレリーナを妊娠させた疑いをかけられ逮捕され、自殺する。二人の男性の孤独でやるせない愛が痛いほどわかる。

 愛する人が物言わぬ状態にいる。一方的な愛になってしまう。互いに愛し合っているという錯覚を抱くが、それは自己満足でしかない。考えてみれば、愛というのは実は植物状態の相手に一方的に愛を確かめようとしているだけなのかもしれない。そんなことを考えてしまう。

 アルモドバル監督の映像も美しい。深刻な状態を、あまり深刻にならずに描いていくのも実にいい。バレー教師の役でジェラルディン・チャップリンが出演しているのでびっくり。スペイン映画にも多数出演しているとは知らなかった!

 

51jajuvoubl_ac_us160_ 「ライブ・フレッシュ」 1997年

 素晴らしい映画。バスの中で売春婦が産み落とした男の子ビクトル。長じて、たまたまであった女性エレナに一目ぼれして、その自宅を訪れるうち、エレナの持ちだしたピストルで、駆けつけた刑事を傷つけてしまう。ビクトルは服役中、テレビで刑事が半身不随になりながらパラスポーツを楽しみ、エレナを妻にしていることを知って、憎しみを募らせる。刑務所から出ると、すぐにエレナに会いに行こうとする。

ストーリーはこのくらいにするが、一方的に憎しみを募らせる歪んだストーカーと思われたビクトルが実は純情であり、最後にはエレナと結ばれる。ビクトルもエレナも二人の刑事も、もうひとりの重要人物クララも、それなりに懸命に生き、自分の愛を守ろうとするが、それが思わぬ方向に進んでしまう。人生の重み、人と人のつながりについて考えこみたくなる。それを色彩鮮やかに描く。エネルギーと猥雑さと生きる悲しみにあふれた名作だと思う。

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