新国立劇場「ホフマン物語」 見事な上演だが、フランスっぽくなかった
2018年3月3日、新国立劇場で「ホフマン物語」をみた。全体的にとても良かった。ただ、素晴らしい上演とまでは行かなかった。
セバスティアン・ルラン指揮による東京フィルハーモニー交響楽団は十分にこなれた演奏だと思う。大きな失敗もなく、とてもきれいな音を出しているのだが、もう少し、香りというか雰囲気というか、そのようなものがほしい。その点で物足りなさを感じた。
圧倒的に素晴らしかったのは、リンドルフなどを歌うトマス・コニエチュニー。太くて存在感のある歌。音程もいいし、容姿もいいし、この役には申し分ない。悪魔的で得体の知れない面もうまく出している。ニクラウスなどを歌うレナ・ベルキナもとてもしっかりとした声でこの多面的な役を見事に歌いこなしていた。
ホフマンを歌うのはディミトリー・コルチャック。きれいな声でしっかり歌っているし、容姿も素晴らしい。ただ、少しだけ「決まらない」ところを感じた。ちょっと音程があやふやになったり、声が出なかったりする。しかし、もちろん十分に主人公を歌っている。
日本人キャストも外国人に劣っていなかった。オランピアの安井陽子はとてもきれいな高音。デセイなどと比べると音の輝きに欠けると思ったが、そんなことを言っても始まらないだろう。アントニアの砂川涼子は清澄なきれいな声で、この役にふさわしい。はじめのうち、ちょっと歌が平板になるのを感じたが、徐々に安定してきた。ジュリエッタの横山恵子も健闘していたが、少し声が出ていなかったかもしれない。アントニアの母やステッラを歌う谷口睦美もとても安定した美声。フランツなどを歌う青地英幸もよかった。特筆するべきは、三澤洋史合唱指揮による新国立劇場合唱団だ。声がそろっているし、音程もいい。
ただ、全体的にあまりフランス的なところが感じられなかった。指揮者はフランス人なのだから、オーケストラや歌手たちに問題があるのだろう。フランス語らしい洗練された軽みがなく、言葉の発音も妙にかっちりしている。フランス語特有に鼻母音などが聞こえてこなかった。先ほど、「雰囲気」に欠けると書いたが、そのあたりがそうなってしまっている原因なのかもしれない。コニエチュニーは素晴らしかったが、その彼でもフランスっぽさがあまり感じられなかった。
演出はフィリップ・アルロー。幻想的で洒落ていて、とても良い演出だと思う。わかりやすいし、奇をてらっていないし、 これは雰囲気にあふれている。演奏もこの演出のような雰囲気がほしかった。
とはいえ、繰り返すが、全体的にはかなりレベルの高い上演だと思う。このレベルのオペラを日常的に上演してもらえるのだから、首都圏の住民は実に幸せだと思う。
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