ラ・フォル・ジュルネ2018が楽しみになってきた
先日、このブログに5月の東京でのラ・フォル・ジュルネに出演予定のラルス・フォークトとロイヤル・ノーザン・シンフォニアのことを書いた。その続きを書く。
その後もフォークトの録音をいくつか聴いてみた。テツラフ兄妹と演奏したブラームスのピアノ・トリオ2枚組、そしてモーツァルトのピアノ・ソナタや幻想曲を録音した2枚組がどちらも素晴らしい。とりわけ、ニ短調とハ短調の幻想曲にびっくり。弦楽器好きの私がピアノに惹かれることなんてめったにないのだが! イタリア・オペラ嫌いだった私がネトレプコに導かれてヴェルディやベッリーニやドニゼッティのオペラを楽しむようになったのだが、フォークトに導かれて今度はピアノの世界に入り込む予感がしないでもない。いよいよもってラ・フォル・ジュルネが楽しみになってきた。
その勢いで、今年のナントのラ・フォル・ジュルネでライブ録音されたヴァイオリニスト数人の演奏を関係者にお願いして聴かせてもらった(Tさん、ありがとうございます)。
まず、アレーナ・バーエワによるコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。曲の冒頭のソロ・ヴァイオリンの深みのある妖艶さに耳を引き付けられた。鮮烈な音なのだが、不思議な色気がある。腰がどっしりと落ち着いており、じっくりとコルンゴルト特有のロマンティックな世界を展開してくれる。その後も、堂々たる演奏。大演奏家の風格と初々しさがいりまじっている。写真で見ると、かなり若い、しかもとびっきりの美人。ますます楽しみ。
もう一人、女流ヴァイオリニストのアレクサンドラ・コヌノヴァも楽しみだ。サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」を聴いた。バーエワに比べるとずっと若々しくて躍動的。音の処理がとても清潔。このヴァイオリニストも写真で見ると、とんでもない美人。もちろん楽器の演奏家にとって容姿は大きな意味を持たない(オペラ歌手の場合には、とても大きな意味を持つ!)が、男性の一人として、やはりきれいな演奏家だと嬉しい。
もう一人、5月のラ・フォル・ジュルネのプログラムに含まれているシュポルツルと伝統ロマ音楽団体によるジプシー音楽も聴いてみた。これも実におもしろい。シュポルツルはこれまでラ・フォル・ジュルネでも、それ以外のコンサートでも何度か聴いてきた。青いヴァイオリン(!)を弾く魅力的なヴァイオリニストだ(こちらは女流ヴァイオリニストではなく、中年男性)。
シュポルツルのヴァイオリンは、私がジプシー音楽といって想像したような情熱的な演奏ではない。もっと軽やかで、悪く言えば無表情。よく言えば天衣無縫。あっさりとさりげなくとてつもないテクニックが披露される。シュポルツルはジプシーの人生の苦しみや喜びを音楽に込めようとはしない。ただただ音楽の楽しみを軽やかに歌い上げる。それが重めのロマの楽器と相まって独特の雰囲気を作り出す。おもしろい。どんどん盛り上がっていく様子が音からわかる。が、実際のコンサートを見てみないと何が起こっているのかよくわからない。
そのほか、今回のラ・フォル・ジュルネにはジュリアン・ラクリンもヴァイオリンと指揮を披露するらしい。かなり前になるが、ラクリンのヴァイオリンを聴いて、最初に聴いた時は凄まじいテクニックと深い音楽性を感じさせる名演、二度目に聴いた時には最初の名演が信じられないような凡演だった記憶がある(曲目に記憶はない)。さて、今回の日本での演奏はとどちらだろう。これも楽しみの一つだ。
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