METライブビューイング「セミラーミデ」 歌手たちの超絶技巧に酔い、ロッシーニの躍動する音楽に心躍らせた
東銀座の東劇でMETライブビューイング、ロッシーニ作曲「セミラーミデ」をみた。驚異的な名人たちの競演に酔いしれた。
まず、指揮のマウリツィオ・ベニーニが素晴らしい。序曲からしてドラマティックで力感にあふれ、高揚感がはちきれそう。やはり、ロッシーニのオペラはこうでなくちゃ!
歌手たちも、まさに超絶技巧の連続。イドレーノのハヴィエル・カマレナの強靭な超高音に度肝を抜かれた。セミラーミデのアンジェラ・ミードも技巧も素晴らしいし妖しい魅力の悪女の役作りも見事。アルサーチェのエリザベス・ドゥショングも確かに青年に見えてくる。ミードとの二重唱も声がぴたりと合って圧巻。アッスールのイルダール・アブドラザコフも悪役を演じて素晴らしい。この主役四人はいずれも技巧といい声の力といい、演技といい申し分なし。よくぞ、ここまでの歌手が集まったものだと感心した。
高僧を歌うライアン・スピード・グリーンは貧しいアフリカ系アメリカ人だったとインタビューで答えていた。少年院に入るようなぐれた少年だったのが、若手育成プログラムによってMETの舞台に立つようになったという。立派な声と立派な体格。そのうち、もっと大事な役を歌うようになるだろう。このようにして次々と優秀な歌手が育っているようだ。頼もしい。演出はジョン・コプリー。とてもわかりやすく、しかもドラマティックで美しい。これも文句なし。またしてもメトロポリタン歌劇場の底力を見せつけられた。
それにしても、ロッシーニのオペラは本当にワクワクする。とりわけ、この「セミラーミデ」はドラマとしてもおもしろいし、とてもよくできている。もちろん、ストーリー的には話がうまく出来すぎているし、急展開がはなはだしいし、急展開のわりに歌の部分ではいつまでも話が進まなくて同じことばかりをずっと歌い続けている・・・というようなオペラ特有の問題点はあるが、音楽があまりに楽しく、美しく、ドラマティックなので、そのような欠点を吹き飛ばす。歌手たちの超絶技巧に酔い、ロッシーニの躍動する音楽に心躍らせているうちに、あっという間にオペラが終わってしまった。これぞロッシーニ醍醐味。満足。
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