「魔弾の射手」「オイリュアンテ」「ヘンゼルとグレーテル」のオペラ映像
ドイツ・オペラの映像を何本か見たので、簡単に感想を書く。
ウェーバー 「魔弾の射手」 1999年 ハンブルク・シュターツオパー
ドイツ・オペラは大好きなのだが、どうも「魔弾の射手」はなじめない。音楽は面白いと思うのだが、ストーリーがあまりに支離滅裂なために、まったく感情移入できない。「いったい、どういうこと?」とずっと思い続ける。そんなわけで、実演は、確かこれまで一度、どこかの団体の公演を見たことがあるだけ。しかも、それもまったく感銘を受けなかった。映像もほとんどみたことがない。が、今回、2本みてみることにした。
まず、インゴ・メッツマッハー指揮によるハンブルク・シュターツオパーの上演。演出はペーター・コンヴィチュニー。私はこのオペラがどのように演出されているのかよく知らないので、コンヴィチュニーがどのような工夫をしているのかよくわからないが、ともかくあまり面白くなかった。音楽的にも、全体的にかなり低調。メッツマッハーは鮮烈な音を連ねているが、歌手たちがあまりよくない。外見的にも、マックス、アガーテ、エンヒェン、カスパールのすべてにリアリティを感じない。私としてはかなり不満の残る映像だった。
ウェーバー 「魔弾の射手」2015年 ドレスデン、ゼンパーオーパー
ハンブルクの上演に比べると、すべてにおいてこちらの方が圧倒的に素晴らしい。まず近年のティーレマンの充実ぶりには驚嘆する。厚みのあるオーケストラの音が豊穣に折り重なっていく。強くて深い音が全体に広がる。細かいところもぴたりときまる。ドレスデン・シュターツカペレも本当に素晴らしい音を出している。
カスパールのゲオルク・ツェッペンフェルトがとりわけ素晴らしい。悪役らしい太い声。演技も見事。マックスのミヒャエル・ケーニヒも、見た目では初々しい若者には見えないが、声だけ聴けば実に見事。アガーテのサラ・ヤクビアクも張りのありしっかりした声で、遠目には十分にアガーテに見える。エンヒェンのクリスティーナ・ランツハマーはかわいらしい容貌と若々しい声が魅力的だ。アルベルト・ドーメンのクーノー、アドリアン・エレートのオットカールもいい。アンドレアス・バウアーの隠者もそれらしくていい。
演出はアクセル・ケーラー。オーソドックスな演出だと思って安心してみていたら、最後、オットカールが隠者との約束を破って少年に銃を撃たせ、銃声が響きわたるところで終わる。人々が聖なるものに向かって平和を祈ったあとも、まだ銃火が続いていることを訴えているのだろう。
この演奏を見ると、「魔弾の射手」も悪くないと思う。が、やはりあれこれの設定に必然性がなく、登場人物の行動もその理由が不明であって、私にはこのストーリーは受け入れがたい。
「オイリュアンテ」(これまで私は「オイリアンテ」と呼んできた)の映像を初めてみた。序曲や有名なアリア以外は録音も聴いたことがなかった。初めて聴いてみて、音楽的にはとてもおもしろいと思った。ただやはり、台本があまりにご都合主義的。とはいえ、「魔弾の射手」よりはまだしもストーリーに説得力はある。敵の計略によって妻(オイリュアンテ)の不貞を疑った貴族の物語。
この上演については、二人の女性歌手オイリュアンテのエレーナ・プロキーナと敵役エグランティーネのヨラーナ・フォガソヴァが圧倒的に素晴らしい。清純なオイリュアンテと毒婦エグランティーネの対照が声、歌唱、演技によって描かれてとても説得力がある。それに比べると男性歌手は少し物足りない。その中では、アドラー役のチョン・イグン(韓国人歌手だろうか?)が健闘。二人の女性歌手ほどの伸びはないが、しっかりと歌っている。
ただ、ジェラール・コルステンの指揮、そしてカリアリ歌劇場管弦楽団・合唱団の演奏がピリッとしない。ドイツ的な雰囲気がないのはいいとしても、少々雑な感じ。ピエール・ルイージ・ピッツィの演出については、全く未知なオペラなだけに何とも言えない。ともあれ、私は十分に楽しむことができた。
フンパーティンク 「ヘンゼルとグレーテル」2008年 コヴェント・ガーデン王立歌劇場
素晴らしい上演! 最初から最後まで、実に楽しい。演出はモーシェ・レイザーとパトリス・コリエ。わかりやすくて楽しくて、適度にグロテスク。コリン・デイヴィスの指揮はかなりダイナミックで、まるでワーグナーのように演奏している。ワーグナーそのものと思えるようなところもたくさんある。ちょっと違和感があったが、それはそれで見事な演奏。
歌手たちは全員が言葉をなくすほどの凄さ。とりわけ、ヘンゼルのアンゲリカ・キルヒシュラーガーとグレーテルのディアナ・ダムラウの声と演技にはあきれるほど。本当の少年少女のようにかわいらしい動きをしている。
母親のエリザベス・コネル(食べ物がなくて困っているという設定のわりには、あまりに体格がいい点では少し問題だが)もいいし、父親のトーマス・アレンもいい。そして、なによりも魔女のアニヤ・シリヤが実に見事に不気味な魔女を演じている。もちろんかつての声は失われているし、声はかすれているし、音程も甘いが、魔女であればこれでいい。そのほか、眠りの精のプメザ・マトシキザも露の精のアニータ・ワトソンも素晴らしかった。
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