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ピレシュとブロムシュテットのベートーヴェンに興奮した

 2018420日、NHKホールでヘルベルト・ブロムシュテット指揮、NHK交響楽団の定期演奏会を聴いた。曲目は前半に、マリア・ジョアン・ピレシュが加わって、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、後半にベートーヴェンの交響曲第4番。どちらの曲も素晴らしかった。興奮した。

 ピレシュ(というか、日本ではずっとピリスと呼ばれてきた)は今年限りで引退を宣言したので、これが最後の来日。20年ほど前のことだったと思うが、ピアノにあまり関心のない私はデュメイのヴァイオリンを目当てに聴きに行ったら、ピアノ伴奏のピレシュがあまりに凄くて圧倒されたのを覚えている。それ以来、数少ない私の好きなピアニストなのだが、そもそもピアノをあまり聴かないので、ピレシュを聴くのはこれが三度目くらい。

 それにしても素晴らしい。一つ一つの音があまりに美しい。ちょっとしたメロディも深みを帯びて響く。私はピアノに疎いので、どういう仕掛けなのかよくわからないが、なぜかピレシュの音はジーンと心に響く。とりわけ、第一楽章のカデンツァがあまりに素晴らしかった。これほど高貴でこれほど繊細でこれほど自然なピアノの音は聴いたことがない。音は必ずしも大きくない(NHKホールが響かないせいではないだろう)が、心の奥にふかぃ深く入り込んでくる。第2楽章もとてもよかった。オーケストラの強めの音とピレシュの静かな音の対比が見事。しなやかで繊細なピアノに痺れた。ただ、第3楽章についてはもっと高揚して、もっとダイナミックでもいいような気がした。その点では少しだけ不満だったが、これがピレシュの作るベートーヴェンなのだろう。しなやかで高貴で深く心に入り込むベートーヴェン。それはそれで素晴らしい。

 ピアノのアンコールとしてベートーヴェンの6つのバガテル作品1261曲だという。一つ一つの音の美しさに驚嘆した。

 前半はどうしてもピレシュに耳を奪われたが、後半はブロムシュテットとN響の素晴らしさを堪能した。

 交響曲第4番は大好きな曲だ。とりわけ、第1楽章の冒頭、霧の中で手探りで歩いて行ったあと、フォルティシモになってみるみる視野が開けていく部分にいつも感動する。ワクワクして躍動感を覚える。それどころか、私は第1楽章をよい演奏で聴くと、ほとんど躁状態になる。ブロムシュテットはきびきびして躍動する音楽を作る。まったく無駄がなく、余計な遊びも誇張もない。だが、実にダイナミックで躍動し、若々しい。私の心の中に躁状態を作ってくれた。第4楽章はもっとすごかった。第1楽章以上にワクワク感を作り出す。私は叫びだしたくなるのを抑えるのに苦労した。身体も動きだしそうになった。N響も実に見事にブロムシュテットの音楽を作り出していた。木管管楽器がとりわけ切れがよく、美しい。ブロムシュテットが指揮をする時、とりわけ素晴らしい音になる

 興奮した。家に帰り着くまで興奮がさめなかった。

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コメント

樋口先生

しばらくご無沙汰しています。
私はピレシュのソロコンサートに行ってきました。
来日したら絶対行きたいピアニストの一人でしたので、
引退は寂しいのですが、納得できる気もします。
昨今色々聞いていると、やはり一流の人はそれだけの音を出すために
どれだけ努力しているか感じます。
一昨日も一流だけど、そして素晴らしいけれど、でも、、、というコンサートに行ってしまって。
あれだけの人の心に響く音を残してくれて感謝です。

nakajima

投稿: nakajima | 2018年4月26日 (木) 13時25分

nakajima 様
ご無沙汰しております。コメント、ありがとうございます。
私はピアノをめったに聴きませんし、ピレシュを聴くのも10年ぶりくらいでしたので、素晴らしさに感動したのでしたが、かつてのピレシュからすると物足りなく思う方も多かったのかもしれませんね。
それにしても、少しも衰えないブロムシュテット恐るべし、と改めて思います。

投稿: 樋口裕一 | 2018年4月28日 (土) 00時25分

はじめまして。

昨晩、ビリスさんとブロムシュテット&N 響のべ-ト-ヴェン協奏曲4番がeテレで放映され、ピリスさんのピアノにものすごく感動しました。
当日ホ-ルで聴いた方は、どんな感想だったのか気になってブログを読ませていただきました。
ビアノの音色が美しかったという感動が伝わって、たいへん参考になりました。
会場のライヴの音とテレビの音など比較にもならないことは承知してますが、それでも、万分の一かは、真の芸術の欠片は感じられた気がしました。

テレビでは、ビリスさんのミニドキュメンタリーも放映され、あの音色の源の一端が知らされ、良い番組でした。

投稿: SAAGAR | 2018年6月11日 (月) 02時58分

SAAGAR 様
コメント、ありがとうございます。
このところ、昼間は仕事、夜はコンサートといった具合で、時間が取れずにまだ録画しただけで放映は見ていません。ピレシュは以前ほどではないという意見を何人かから聞きましたが、でも、十分に素晴らしいですよね。時間を見つけて、あの時の感動を映像で再現したいと思っています。

投稿: 樋口裕一 | 2018年6月12日 (火) 23時53分

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