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ラ・フォル・ジュルネ東京2018について考えたこと、そして私のベスト5

 2005年にラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンが始まったときから、私はこの音楽祭にかかわった。初めのころは「アンバサダー」として、この音楽祭の素晴らしさを多くの人に伝えようとした。ナントのラ・フォル・ジュルネも三度訪れた。これまで合計490の有料コンサートを聴いた。ラ・フォル・ジュルネ東京2018を終えて、私なりにいくつか考えたことがある。

 

・今回のラ・フォル・ジュルネ東京では、ラルス・フォークトの指揮とピアノを聴けてとても満足だった。直前にフォークトのすごさに気づいて、追いかけることにしたのだった。予想していた通り、そのほとんどが素晴らしい演奏だった。

 

・Aホールの空席が目立った。私が足を運んだ中では、フォークトが弾き振りをしたベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番のコンサートがあまりにガラガラで、演奏家に申し訳ないと思った。主催者は、フォークト+ロイヤル・ノーザン・シノフォニアを今回のラ・フォル・ジュルネの売り物として大きく打ち出してもよかったのではないかと思う。これまでのコルボ+ローザンヌ声楽アンサンブルに匹敵する実力の持ち主だと思う。彼らがやってくることはあまり注目されていなかったように思う。

 

・スタッフの対応はとてもよかった。客対応に不慣れな人もいただろうが、ふだんこのような仕事をしていない人にこれ以上を求めるのは無理だと思う。見事な運営!

 

・時間通りに始まり、ほぼ時間通りに終わるコンサートが多かった。もちろん、それはそれでありがたいことだ。だが、時間になったら会場が明るくなり、拍手がやんで観客は次の会場に向かう・・・という現在のあり方は、私は初めて訪れて感嘆した2005年ころのナントの状況とあまりに違う。当時は、素晴らしい演奏の後、観客が熱狂していつまでも立ち去らずに遅れてしまったり、演奏者のリハーサルが続いて開演時間になってもまだホールが開かないことも多かった。あちこちに行列ができ、混乱が起こっていた。だが、そうであるからこそ、手作り感があり、熱狂があった。スケジュール通りに進んでいくことと、あちこちで熱狂が起こることは相反することだと思う。私は昔のナントの手作りの熱狂が懐かしい。

 

・拍手喝采があまりに淡白だと思う。ナントのような熱狂をまねするべきだとは思わないが、日本のふだんのコンサートでももっと熱狂的な拍手が起こる。それに匹敵する名演奏でも今回は拍手が少なかった。おそらく、コンサート慣れしていない人たちが多いので、遠慮がちになるのだと思う。コンサート慣れした人がもう少し意識的に拍手を先導してもいいのではないかと思う。

 

・きっと主催者が意識していると思うが、演奏者に美男美女が多い。偶然、これほどそろうことはあるまい。私が聴いたコンサートだけでも、バーエワ、コヌノヴァ、カマリーナはかなりの美人だったし、ポラトはかなりのいい男だった。ある意味でうれしいことだが、演奏家がみんな美男美女というわけではないだろうから、問題を感じないわけでもない。

 

・勝手に今回のラ・フォル・ジュルネのベスト5を上げると、以下の通りだ。

 

・アレーナ・バーエワ(vl) クレール・デゼール(p)プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番など (東京芸術劇場 53日)

 

・ロイヤル・ノーザン・シンフォニア、ラルス・フォークト(ピアノと指揮)  シベリウス「アンダンテ・フェスティーヴォ」、ベートーヴェン、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」(53日)

 

・モディリアーニ弦楽四重奏団 ドホナーニの弦楽四重奏曲第3番 、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番 「アメリカ」(54日)

 

・ロイヤル・ノーザン・シンフォニア、ラルス・フォークト(ピアノと指揮)、ウェーベルン「弦楽四重奏のための緩徐楽章」、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番 (54日)

 

・吉田誠(cl)、オリヴィエ・シャルリエ(vl)、アレクサンドラ・コヌノヴァ(vl)、川本 嘉子(va)、辻本玲(vc)、マタン・ポラト(p

 プロコフィエフ「ヘブライの主題による序曲」、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲 イ長調 op.81 (55日)

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コメント

樋口先生、私も便乗してLFJ2018の感想をこちらに書かせていただきます。

・Aホールについて、開場と同時に入るとテレビコマーシャルを3回見せられます。オーシャンゼリゼ!とかスピーカから音楽付きで。チケットに料金上乗せしても良いのでコマーシャルはやめてほしいです。これまでもアンケートに何度も書きましたがやめてもらえませんね。絶対にやめてほしいです。

・Aホールについて、皆さんほぼ諦めていると思いますが、生音にはだいぶ厳しいホールです。音が横に広がり前の方にこもってしまいストレスです。聴くなら最前列に限ります。初日は1階の前方ブロック13列目中央普通のホールならいい席で、クニャーゼフのドヴォルザーク聴きました。とても楽しみだったのですが音が全然私の耳まで来てくれません。素晴らしい演奏が観て取れるので余計にストレスで心を閉じ、眠くなりました。3日目のファイナルでは最前列中央で聴きました。クニャーゼフ自作のユダヤの曲、初めて聴きましたが美しくも苦悩に満ちた迫力の演奏に心揺さぶられ感動で涙を流しました。隣の席の知らない人も泣いていました。

Aホールは2度と来ない!毎回思いますが、忘れてまたチケット買ってしまいます。

・エルパシャの演奏を3日連続で聴くことができました。主にショパンとラフマニノフですが、一部同じ曲を初日はYAMAHA-CFX7で、3日目はSteinwayで。最高の贅沢でした。私はYAMAHAの音の方がかなり好きです。

・講演会やマスタークラスがとてもマニアック?かつわかりやすくて楽しかったです。ただ、講演プログラムの発表が遅すぎます。コンサートのスケジュールにかぶってしまうのです。とても残念。

・アルバイトの赤いTシャツのスタッフさんたち。悪気はないので文句言いたくないですが、これからコンサートなのに、大声で叫ばないで。「こちらはM***の会場でーす!!」とか、入場した途端「お席をご案内致します!」すごい大声で迫ってくるんですよ。まだ時間が十分あるので静かにしてほしいです。

と、文句もたくさんありますが、楽しかったです!運営の皆さんには心からお礼を言いたいです。

投稿: Tamaki | 2018年5月 8日 (火) 01時06分

「時間通りに始まり、ほぼ時間通りに終わるコンサートが多かった。もちろん、それはそれでありがたいことだ。だが、(以下略)」というご指摘に込められた思いに、私も同感です。一抹の寂しさというか、割り切れない気持ちというか、ラ・フォル・ジュルネが曲がり角に来たような思いがします。今後どうなっていくのか、ちょっと緊張です。

投稿: Eno | 2018年5月 8日 (火) 21時39分

おそらくこの名前では初めましてになると思います。

自分は今年三つだけ公演に行きましたが、イ・ムジチの初日のロマン派以降の作品を集めた公演といい、伊福部さんの公演といい大変満足しました。特に伊福部さんの公演はちょっと後半の「日本狂詩曲」で井上さんの煽り演出もあって会場全体尋常ではない盛り上がりになってしまいました。

自分はLFJには特に強い思い入れが無いため、毎年あまり聴くことがないのですが、今回聴くことができなかった貴志康一の作品といい、昔の日本人の作曲家が取り上げられている事はとても嬉しく思います。今後ともこの傾向は維持してほしいです。

Aホールに関しては個人的に「屋根付きの野外コンサート」というふうに思ってますので、あそこだけは別物と思ってますし、タイムスケジュールをAホールのみもっと柔軟にすべきかと思います。フォークトのベートーヴェンもそうすればもっとアピールできたかもしれません。

また極端な話、その日売り切れたコンサートの出演者を一同に会して、そのときのプロを抜粋で次々と演奏していく「総集編」コンサートをやったっていいと思いますし、それが許されるアバウトなホールだと思います。このあたりこのホールの欠点を逆手にとった企画あたりもし一考して来年よりよいものにしてほしいです。

投稿: 相佐和萬 | 2018年5月 9日 (水) 02時36分

Tamaki 様
コメント、ありがとうございます。
もちろん、お気持ちはよくわかります。が、ホールが悪くても、外がうるさくても、運営がもたついていても、まあいいじゃないか、ともあれ楽しもう・・・と思っています。ラ・フォル・ジュルネはそれでよいのではないでしょうか。

投稿: 樋口裕一 | 2018年5月 9日 (水) 21時00分

Eno 様
コメント、ありがとうございます。数年前まで、日本のラ・フォル・ジュルネももっと無軌道な熱狂があったように思います。観客の熱狂がいっそう演奏を熱くしたのを覚えています。ラ・フォル・ジュルネも曲がり角かもしれません。
ブログを楽しく読ませていただいています。ガルミッシュには私も近いうちに行きたいと思っております。

投稿: 樋口裕一 | 2018年5月 9日 (水) 21時08分

相佐和萬 様
コメント、ありがとうございます。
私が避けたコンサートをお聞きになったんですね! 心は動いたのですが、ほかのほうが感動できそうだと思ったのでした。Aホールはおっしゃる通り、イベント会場とみなすほうがよいかもしれませんね。私もAホールで聴くたびに無力感のようなものにとらわれます。イベント会場と考えれば、そのような思いを抱かずに済みそうです。

投稿: 樋口裕一 | 2018年5月 9日 (水) 21時21分

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