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ラ・フォル・ジュルネ東京2018 5月5日(3日目最終日)

 ラ・フォル・ジュルネ東京の3日目。今日は6つのコンサートを聴いた。今年は3日間で合計21の有料コンサートを聴いた。2005年から数えると、有料コンサートだけで490聴いたことになる! 今日のコンサートの感想を簡単にまとめる。

 

・荘村清志(ギター)、 新日本フィルハーモニー交響楽団 パスカル・ロフェ(指揮)

 ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」、ファリャのバレエ音楽「三角帽子」 第2組曲

 

これまで何度か荘村さんの「アランフェス」は聴いたことがある。ますます味わい深くなって素晴らしい。そして、それ以上に新日フィルの底力、ロフェ のオーケストラコントロールに圧倒された。とりわけ、三角帽子組曲の終曲のリズム、色彩が鮮やか。躍動に溢れ、音楽の楽しさが爆発。

 

・パヴェル・シュポルツル(vl)、ジプシー・ウェイ(伝統ロマ音楽)

 ブラームス「ハンガリー舞曲 第5番」、サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」など

 

とても楽しいコンサート。シュポルツルの超絶技巧、ロマ音楽の楽器の音が楽しめた。シュポルツルはさらさらと難曲を弾きこなす。観客を驚かせ、雰囲気に巻き込む。ロマと聞いて思い浮かべるような重い調べではない。軽い気持ちでロマの音楽を楽しめる。ただ、シュポルツルの美音を聴きたかったのだが、マイクを通してアンプで増幅された音だった。シュポルツルの美音と音楽性をよく知っている私としては、ちょっと残念。

 

・ロイヤル・ノーザン・シンフォニア、ラルス・フォークト(指揮)

 モーツァルト:交響曲第25番、ショスタコーヴィチの室内交響曲 op.110a

 

改めてフォークトの音楽性、オーケストラの力量を感じた、勢いのある演奏。細かなところまで神経が行き届いている。モーツァルトの交響曲第25番は、若書きのこの曲をまさしく見事な曲として聴かせてくれた。ただ、勢いがあるので、若々しさは失われない。ショスタコーヴィチのほうは、私は室内交響曲のバージョンを初めて聴いた。弦楽四重奏バージョンより強烈になるかと思っていたら、むしろ柔らか味が増していた。フォークトがそのような演奏を求めたのかもしれないが、私としては、もっと激しい演奏が好みだ。とはいえ、やわらかい音から激しい音まで、このオーケストラの弦の音は本当の素晴らしい。

 

 ・ロイヤル・ノーザン・シンフォニア、ラルス・フォークト(ピアノと指揮)

モーツァルトのオペラ「皇帝ティートの慈悲」序曲、ショパンのピアノ協奏曲第1

 

 きわめて男性的なショパン。感傷的なところがない。ちょっと聞くと、ショパンと思えないような雰囲気。筋肉質で構築的で、ショパン特有の装飾がそっけない。ショパン好きは不満に思ったことだろう。私はショパン好きではないし、このようなタイプの演奏は大好きなのだが、こういう演奏だとショパンの魅力が、なくなるような気がする。フォークトはショパン弾きではなさそうだ、というのが私の結論。

 

 ・アンサンブル・オブシディエンヌ、エマニュエル・ボナルド(リーダー)

中世の伝統歌 

 

中世の楽器を用いて、デュファイなどの歌や器楽曲が演奏された。歌の内容はよくわからなかったが、楽器の音もおもしろく、歌もおもしろい。ただ、どんな楽譜で、どのくらい伝統通りに忠実に演奏しているのかがよくわからなかった。こちらの勉強不足ではあるが。

 

・吉田誠(cl)、オリヴィエ・シャルリエ(vl)、アレクサンドラ・コヌノヴァ(vl)、川本 嘉子(va)、辻本玲(vc)、マタン・ポラト(p

 プロコフィエフ「ヘブライの主題による序曲」、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲 イ長調 op.81

 素晴らしかった。ベテランのシャルリエが第一ヴァイオリンとして若手演奏家たちを率いての室内楽。まず、プロコフィエフがよかった。吉田誠のクラリネットが、軽妙で勢いがある。そして、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲も最高だった。ドヴォルザークの美しいメロディがオンパレードのこの曲をしみじみと、しかも深くドラマティックに演奏してくれた。シャルリエの音楽は実に味わい深い。濃厚なフランスの味わい。音そのものが味わい深いし、構築感もある。ポラトのピアノの音もくっきりしていて、しかも趣きがある。コヌノヴァもシャルリエの技を盗んでいくうちにきっと表現が豊かになって素晴らしいヴァイオリニストになるだろう。川本と辻本もいい味を出していた。興奮して聴いた。

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コメント

樋口先生、LFJお疲れ様でした!私も3日間通って色々な人に会えたのですが、なぜか一番お会いできそうな樋口先生にだけはお目にかかれず残念でした!

私はシュポルツルは今回初めてだったのですが、青いヴァイオリンに魅了されプラハの旧市街広場を頭に思い浮かべ楽しみました。4日の池袋シアターウエストでは小さな劇場(270人)だったせいか生音で聴かせてもらいました。最終日にはクラシカジャパンの企画でトークショウがあり参加したのですが、彼は自身のクラシックのバックグラウンドと思い入れについて語っていて、なるほどただのエンターティナーではないことを知りました。

アンサンブル・オブシディエンヌは、小田島さんが聞き手、藤本さんが仏語通訳で15:00からトークショウがありとても興味深い内容でした。
書きなぐりのメモを見直すと、彼らは全員ブルゴーニュのサンス(Sens)の方で、曲はモーセの詩篇1ー50までを16世紀以前の吟遊詩人が伝えた方法を研究し、できるだけ忠実に再現しているとのことです。1516年完成のサンス大聖堂の素晴らしいステンドグラスステンドグラスをスライドに映して古楽器について解説してくれました。そのバラ窓には60人の天使が古楽器を演奏している様子が描かれています。タンパノン(ティンバロン)、ハーディガーディ、リュート、ビオラダガンバの原型、アラビアギターなど。心惹かれる興味深い解説でした。つまり、リーダーのエマニュエル・ボナルドさんは音楽家である前に古楽研究の学者であるということを知りました。

彼らがコンサートで実際に使っている楽器の演奏方法なども一人一人が披露してくれて、間近に聴くことができてとても大きな収穫でした。これまで古楽には全くの無知で、手も届かず興味もなかった私ですが、もう絶対にサンス大聖堂を見に行こう、もっと古楽が聴きたいと強く思ったので、これもLFJ効果だと思いました。

ただ残念なことに200席弱の客席は半分も埋まっていなかったのが信じられません。古楽器の話を第一人者から聞けるチャンスはそうそうないと思います。

投稿: Tamaki | 2018年5月 6日 (日) 12時06分

Tamaki 様
そうでしたか。残念ながら、会いませんでしたね。アンサンブル・オブシディエンヌの話、ききたかったですね。
シュポルツルのバッハの無伴奏をナントと日本で聴きましたが、澄みきった音による天衣無縫のバッハという感じで、素晴らしかったですよ。今回は芸術劇場では生の音だったんですね。そちらにすればよかった! ところで、たぶんTamakiさんは、以前にシュポルツルを聴いたことがあると思います。2009年のラ・フォル・ジュルネでネマニャとも共演してヴィヴァルディの4台のヴァイオリンのための協奏曲を演奏しました。ただ、その時はネマニャに押されて、ほとんど目立ちませんでした。

投稿: 樋口裕一 | 2018年5月 7日 (月) 07時50分

初めまして。クラシックオタクの高校生です。 
ラフォルジュルネでは10公演を梯子しました。
私もラルスフォークトのショパンを聞いたのですが、正直ハラハラする演奏でした。この曲の弾き振りは少々無理があったような気もします。フォークトらしい美点も感じ感じたのですが、私が思い描く美しいショパンとは程遠かったかもしれません・・。
4日のベートーヴェンの四番はメリハリがありかつ繊細で期待以上の名演でした。会場で2番と4番の入ったCDを買い、家で聞いています。このCDも素晴らしいので是非聞いてみてください!

投稿: | 2018年5月14日 (月) 01時17分

クラシックオタクの高校生様
私もその昔、クラシックオタクの高校生でしたので、同じような人がいるのをとてもうれしく思います。ただ、私は50年前の大分市のクラシックオタクでしたので、世界一流の実演を聴く機会は年に一度くらいしかありませんでした。
もちろん、ラ・フォル・ジュルネが始まる前に、フォークトのベートーヴェンの協奏曲のCDはすべて購入して聴きました。2番・4番のCD,素晴らしいですね。そのほか、テツラフと入れたブラームスのソナタやトリオも素晴らしい演奏です。ただモーツァルトの協奏曲(20・23番、21・27番が発売されています)はベートーヴェン、ブラームスほどではない感じがします。ブラームスの協奏曲1番2番を録音してくれると嬉しいですね。

投稿: 樋口裕一 | 2018年5月14日 (月) 23時27分

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