ヤルヴィ+N響のシベリウス「四つの伝説」に感動
2018年5月12日、NHKホールでNHK交響楽団の定期演奏会を聴いた。指揮はパーヴォ・ヤルヴィ。曲目は前半にクリスチャン・テツラフが加わってベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、後半にシベリウスの「四つの伝説」。シベリウスは素晴らしかった!
前半のベートーヴェンに関しては、とてもおもしろいと思った。ヤルヴィとテツラフの個性がぶつかり合っているのを感じた。二人とも一歩も引かず、自分の音楽を主張しているように聞こえた。ヤルヴィは強い音で歯切れのよい音楽を作る。テツラフも切り込んで行く音楽。ただ、残念ながら、私には二人の音楽がかみ合っているようには聞こえなかった。とてもおもしろく感じたが、まったく感動できなかった。二人の相性はよいはずなのに、なぜかこの曲に関しては、私は納得できなかった。
初めて聴くカデンツァだった。ホールの掲示によると、ベートーヴェンがこのヴァイオリン協奏曲をピアノ協奏曲に編曲した時に作ったカデンツァをテツラフがヴァイオリンのために編曲したものだという。現代作曲家の作曲したものだとばかり思っていたので驚いた。とてもおもしろかった。
テツラフのアンコールはバッハの無伴奏パルティータ第3番の「ガヴォットとロンド」。テツラフらしい鋭くて引き締まっていて、独自の境地を描く。いろいろなものをそぎ落としたような音。とてもよかった。
シベリウスの「四つの伝説」を実演で全曲聴くのは、たぶん初めてだったと思う。CDでは何度か聴いたことがあり、「トゥオネラの白鳥」の部分を除いてはあまり魅力ある曲だと思っていなかった。が、今回聴いて、これは素晴らしい曲だと思った。豊かな音楽ではない。だが、根底にしっかりした抒情がある。張り詰めた抒情、冷気の中で徐々に広まっていく抒情とでもいうか。そうした抒情を聴かせてくれたのは、ヤルヴィとN響の功績だろう。弦の重なりも美しいし、木管楽器も美しい。とりわけ、イングリッシュ・ホルンの音色に惹かれた。NHK交響楽団の音の美しさを十分に味わうことができた。最後の盛り上がりも見事。
NHKホールの外ではタイ・フェスティバルが開かれていた。タイ料理の屋台が出ていた。タイは大好きな国でタイ料理も大好きなので、ちょっと食べようかと思ったが、終了を知らせる「蛍の光」がスピーカーから割れた音で流れていたため、いたたまれずに、その場を急いで離れて自宅に向かった。
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