ウェルザー=メスト+クリーヴランド管の第九 凄まじい名演奏!
2018年6月7日、サントリーホールで、フランツ・ウェルザー=メスト指揮、クリーヴランド管弦楽団によるベートーヴェン全交響曲演奏の最終日を聴いた。最高の演奏だった。私はまだ興奮している。少なくとも、今年のこれまでのコンサートでは圧倒的にベストワン。私の人生の中でも最高の演奏の一つだと思う。
最初に弦楽オーケストラのための大フーガが演奏された。このオーケストラの弦楽器の素晴らしさを十分に示す演奏だったが、ただ私としては、「大フーガ」は弦楽四重奏版のほうがよいと思った。
休憩後の交響曲第9番については、私はただただ圧倒されるばかりだった。第1楽章冒頭からして、凄まじい集中力。やや速めのテンポで、矢継ぎ早に音が重なっていく印象だが、推進力があって、緊迫感にあふれ、劇的な感情が深まる。小手先の激しさではなく、心の奥底にある思想が音として宇宙に広がっていくのを感じる。第2楽章もすさまじい躍動。だが、しっかりと理性的にコントロールされている。そして、第3楽章。それにしてもオーケストラの音が圧倒的に素晴らしい。木管楽器の美しさのほれぼれする。何と美しい演奏だろう。第1楽章から第3楽章まで、まさしく完璧。私はしばしば感動に身を震わせた。何度か感動の涙が出てきた。
第4楽章。歌手はラウラ・アイキン(ソプラノ)、ジェニファー・ジョンストン(メゾソプラノ)、ノルベルト・エルンスト(テノール)、ダション・バートン(バス・バリトン)、合唱は新国立劇場合唱団。ソリストたち全員素晴らしいが、四人のアンサンブルが甘いにように思えた。が、三澤洋史が指揮による新国立合唱団がみごとなので、ソリストのちょっとした瑕疵はまったく気にならなくなった。最後は最高度に高揚。ただ、高揚はするが、ディオニュソス的なおどろおどろしい高揚ではなく、きわめて理性的でアポロ的な高揚。これぞウェルザー=メストとクリーヴランド管の持ち味だろう。これほど完成度の高い第九はこれまで聴いたことがないような気がした。
終了後、多くの人が立ち上がっての「スタンディング・オーベーション」。私も立ち上がった。興奮した。
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