ウェルザー=メスト+クリーヴランドのベートーヴェン8番と5番 またも超名演
2018年6月5日。サントリーホールで、ウェルザー=メスト指揮、クリーヴランド管弦楽団のベートーヴェン交響曲全曲演奏の3日目を聴いた。曲目は、「コリオラン」序曲、交響曲第8番、そして休憩後に交響曲第5番。初日、2日目に続いて、圧倒的演奏だった。
「コリオラン」も素晴らしい演奏だったが、私は第8番にとりわけ感動した。まず、すべての楽器の音があまりに美しい。木管楽器も素晴らしいし、ホルンもトランペットも何という美しい音!
指揮も見事。真正面からの正攻法の演奏だった。緻密に織り上げられ、生気にあふれ、実にしなやかで美しい。近年、この曲を奇数番号の交響曲のように激しく演奏するスタイルが流行しているように思うが、ウェルザー=メストの指揮はまったくそんなことはない。偶数番号らしい演奏。力まず、外面的な効果を狙うことなく音楽が進んでいくが、内面から力がみなぎってくる。これほど均整がとれて、しかも生き生きとして緻密に織り上げられた第8番を初めて聴いた。
第5番は、予想以上に激しい演奏だった。ウェルザー=メストが突然、情熱の虜になったかのように速いテンポであおり気味に音楽を進めた。それでもオーケストラは乱れず、最高に美しい音を出す。ウェルザー=メストも、もちろん感情に我を忘れるのではなく、完璧にオーケストラをコントロールし、ベートーヴェンのパッションを再現した。終楽章の最後の部分では感動で体が震えた。本当にすごい演奏。
それにしても、空席が目立ったのが残念だった。これほどの名演奏なのに、せいぜい三分の二くらいしか席が埋まっていない。何が原因でこんなに客が集まらなかったのだろう? ウェルザー=メストとクリーヴランド管弦楽団は日本では知名度がないのだろうか。これを機会にもっと多くの人に真価を知ってほしいものだ。
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