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「万引き家族」 心の絆で結びつく偽装家族の危うさ

 カンヌ映画祭でパルムドールを受賞したことで話題になっている是枝裕和監督の「万引き家族」をみた。とてもいい映画だった。

 万引きで生活している家族。虐待されている女の子の面倒を見るうち、その子までも家族の一員のようになっていく。だが、祖母(樹木希林)の病死を契機に、家族に見えていた人々が他人の集まりだったことがわかり、しかも死体遺棄や誘拐の罪で男(リリー・フランキー)と女(安藤サクラ)は、警察に逮捕されてしまう。

 行為だけを客観的には見れば、中心の男女はまちがいなく犯罪を行う犯罪者にほかならないのだが、ふたりは善意にあふれ、一般の社会から見捨てられた人々を救っている。助けられた人々もそこでは自分らしくいられ、存在を認められて生きている。

 まさしく最下層の生活。子どもたちは学校に通えず、日々の食べ物に事欠き、壊れかけた家で雑魚寝をして暮らす。この偽装家族は資本主義のシステムに痛めつけられて生きているがゆえに、そこから逃れるために万引きをし、年金詐欺を働いているともいえるだろう。彼らは一般の家庭のように制度化された経済的結びつきとしての家庭を築いているのではなく、セリフの中で語られるように、心の絆によって結びついている。だが、万引きや年金詐欺という日本の経済システムの裏をかく行為によって経済から自由な生活を送っているように見えて、常にお金の問題に振り回され、せこく後ろめたく生きていくしかない。その意味で危うさにあふれている。長続きするはずがない。

 是枝監督はもちろん万引き家族を肯定的に描いているわけではない。だが、間違いなく、資本主義の犠牲になって最底辺で肩を寄せ合って、ある意味で社会への復讐として心を大事にして生きていく人に共感を寄せて描いている。そのような絆の危うさを認識しながらも、それに愛情を注いでいる。

 女性と少女が風呂の中で同じような傷があるのに気付く場面、女性が少女を抱き寄せる場面など感動的な場面がいくつもある。

 二人の子どもの演技も見事。そして、やはり安藤サクラのさりげない表情、そして同居する娘を演じる松岡茉優も素晴らしい。彼女が風俗の仕事をして、言葉の不自由な客を抱きしめる場面も感動的だ。テレビのバラエティ番組で見たことのある顔だったが、こんなにいい女優とは知らなかった。樹木希林の演技については言葉をなくすほど。

 ただ、私としては、上に書いた内容以上の深さをこの映画の中に感じることはできなかった。とても良い映画だと思ったが、これまでの是枝作品に比べて圧倒的に優れた映画とは思えなかった。

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