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映画「顔たち、ところどころ」 生き方が刻まれた顔!

 アニエス・ヴァルダとJR(33歳の若いフランスの写真家。本名を明かしていないらしい)の共作によるドキュメンタリー映画「顔たち、ところどころ」をみた。

 ゴダール、レネ、トリュフォー、ヴァルダ、そしてその当時ヴァルダの夫だったジャック・ドゥミは私が学生時代に夢中で追いかけたフランスの映画監督だった。ヴァルダの1964年の映画「幸福(しあわせ)」は、ドゥミの「シェルブールの雨傘」とともに大好きな映画だった。この映画を見るために、何度映画館に足を運んだことか。美しい色彩とモーツァルトのクラリネット五重奏曲が効果的に用いられ、心をかき乱されずにはいられなかった。そのヴァルダも88歳。若き写真家とドキュメンタリー映画を作ったという。みないわけにはいかない。

 ヴァルダも元々は写真家だった。ヴァルダとJRが出会う。JRは町の人々の写真を撮ったり、村の人の所有している昔の写真を手に入れたりして、それを巨大に引き伸ばして町の壁面全体に張りつけるパフォーマンスを行う写真家らしい。二人は車であちこちの村(この映画の原題は「VISAGES VILLAGES」(韻を踏んでいるが、意味的には「顔たち、村たち」)に出かけ、そこで生きる人の写真を建物に貼り付けていく。その様子がロードムービー風に、軽快な音楽に乗って描かれる。

いってみればそれだけの映画だ。だが、年の差54歳の道中が面白い。リスペクトしあい、時に反発し合う二人が自由に語り、楽しみ、村の人々と交流し、自分たちの芸術観をさりげなく披露する。被写体になる町の人々もその様々な価値観、様々な生き方を見せてくれる。多種多様というか、人様々というか。様々な生き方、その生き方が刻まれた顔。この映画の中には様々に生きる人への限りない愛情が注がれていて、それだけでも感動する。

そして、建物に貼り付けた写真の見事なこと。被写体のポーズ、写真の選び方、貼り付け方によるのかもしれないが、町全体が見事な芸術になる。そこで生きている人々を巻き込み、その人たちの生きる顔を描き出す芸術になる。なんでもないことに見えて、実はすごいパフォーマンスだと思った。

JRはかつてのゴダールと同じように常にサングラスをかけ、素顔を見せようとしない。かつてゴダールは友人であるヴァルダには素顔をさらしたことがあった。ヴァルダはJRにもサングラスを取るように促す。だが、JRはかたくなに拒否する。そこで、ヴァルダはJRをノルマンディに住むゴダールに紹介しようと考え、二人でゴダールの家に出かける。だが、ゴダールは約束をたがえて書置きを残して家を出ていた。ヴァルダは怒り、心を痛める。そんなヴァルダに対して、JRはサングラスを取って素顔を見せる。生き方が刻まれた顔がヴァルダにだけ明かされる。

人々の生きる姿、自分の生を肯定する姿、自由に生きる姿に何度も涙が出そうになった。

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