クオーレ・ド・オペラ公演「道化師」を楽しんだ
2018年9月2日、イタリア文化会館でクオーレ・ド・オペラ公演、レオンカヴァッロの「道化師」をみた。この団体が若手中心にレベルの高いオペラ上演をしていることは耳にしていた。「道化師」は私の好きなオペラなので足を運んでみたのだった。期待以上にレベルの高い上演だった。
歌手たちは大健闘。カニオの安保克則はとてもしっかりした声。トニオの小林昭裕も癖のある役を太い声で歌っている。ネッダの今状華乃子もきれいな声。ただ、三人とも演技も歌い回しもあまりに優等生的で育ちがよさそうなのが気になった。演出意図によるのかもしれないが、カニオはもっと荒くれであり、トニオはもっと屈折しており、ネッダは蓮っ葉なのだと思う。そうでないとストーリーや音楽がいきてこない。私は最前列だったので歌手たちの顔の表情までよく見えたが、目の演技も含めて、もう少し演じることを考えてほしいと思った。シルヴィオの上田隆晴、ペッペの江頭隼は歌唱的には少し弱さを感じたが、演技面では主役三人よりも真に迫っていたかもしれない。
特筆するべきは、村人たちを歌った合唱の面々だ。歌も演技も見事だと思った。そして、澤村杏太朗の指揮、山口佳代(ピアノ)、清岡優子(ヴァイオリン)、平田昌平(チェロ)の演奏もとてもよかった。小編成ながらドラマティックで明快な音楽を創り出していた。私はとりわけ清岡のヴァイオリンのクリアな音に惹かれた。
飯塚励生の演出は簡素な舞台装置ながら十分にドラマティックな世界を創り出していた。無駄なくドラマをわからせ、ほとんど何もない舞台上にイタリアの村を感じさせる手腕は見事だと思った。ただ、特に強い自己主張は感じられなかった。
ともあれ、全体として90分ほどの舞台の間、息を飲み、時折感動しながらオペラを楽しむことができた。このような団体がこれほど高いレベルのオペラ上演をしているのはとてもうれしいことだ。
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