ブロムシュテット+N響のブルックナー第9番 自然な中に崇高なものが現れた!
2018年10月13日、NHKホールでNHK交響楽団のコンサートを聴いた。指揮はヘルベルト・ブロムシュテット、コンサートマスターはライナー・キュッヒル、曲目は前半にモーツァルトの交響曲第38番「プラハ」、後半にブルックナーの交響曲第9番。
実は前半の「プラハ」にはいつものブロムシュテットとは違って躍動感を感じなかった。反覆を省略しなかったせいもあるのかもしれないが、いつまでも終わらず、聴いていて退屈した。が、ブルックナーは素晴らしかった。奇跡の91歳だと思った。
前日もインキネン指揮、日フィルの演奏で同じ曲を聴いたばかりだった。サントリーホールの席がよくなかった(音のバランスが悪く、金管楽器ばかりが浮き上がって聞こえた)せいもあるかもしれないが、実に落胆したのだった。だが、今日は満足。なんという違いだろう! インキネンもブロムシュテットもともに誇張しないで音楽を進めていくタイプだと思うが、ブロムシュテットはリズムが生き生きしており、音楽の構築に破綻がなく、ぐいぐいとオーケストラを推進していく。N響の音の重なりも見事。透明で張りのある音。管楽器もとても美しい。音楽がうねりを成し、自然に高揚して、崇高なものが現れる。少なくとも私の席(2階R席)からはオーケストラ全体がまとまりよく聞こえた。
昨日、インキネンの指揮を聴いて、ただ音の交通整理をしているだけのように感じ、崇高なものをまったく感じなかったが、ブロムシュテットで聴くと、宗教的とは言えないにせよ、何かしら崇高なものがそびえたつ。しかも、まったく誇張せず、力まず、無理やり崇高にしようとしないのに、崇高になる。ただ実を言うと、第3楽章はもっと悲痛にもっと劇的に演奏するのが私の好みなのだが、ブロムシュテットの素直な演奏に納得する。あっさり目の作りだが、これがブロムシュテットの持ち味だろう。何度も感動に身が震えた。
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